2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26893221
|
Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
山口 英士 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (10737993)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 可視光増感型錯体 / 遷移金属触媒反応 / 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光は、無尽蔵かつ半永久的な次世代エネルギー源として、その利用は現在大いに注目を浴びている。申請者は、これまでほとんど有機合成化学に用いられて来なかった太陽光の利用に着目し、太陽光エネルギーを吸収しそのエネルギーを化学エネルギーへと変換可能な光増感型触媒の合成および、光増感型触媒を利用し熱的に困難な分子変換反応とりわけ炭素-水素結合の直接変換反応の実現を目的としている。すなわち太陽光の主成分である可視光を吸収する可視光増感部位と反応部位として遷移金属を同一分子内に有する新奇な多機能性触媒の創出及び、光、電子、構造的特性を明らかにする。また、これまで激しい反応条件が必要であった炭素-水素結合直接官能基化反応を光エネルギーにより活性化された触媒により温和な条件での達成を目指す。 そのような目的の中申請者は、可視光を効率的に吸収するルテニウム錯体を可視光増感ユニット、エネルギーを効率的に受け渡すリレーユニット、反応点に種々の遷移金属を用いることで効率的な変換反応が実現可能ではないかと考え、ルテニウム-遷移金属複核錯体の合成を行い、それを用いた炭素ー水素結合の直接官能基化を行い以下の結果を得た。1. 合成したRu-Pd複核錯体のUV/Visスペクトルの結果、吸収スペクトルは単核錯体とほぼ同様の結果を示した。 2. 蛍光寿命を測定したところ、対応する単核錯体と比較して若干の短寿命化が見られた。 3. 実際にベンゾチアゾールとヨードベンゼンとの可視光照射下での反応はほとんど進行しない。 4. 鈴木-宮浦クロスカップリング反応は室温可視光照射下で中程度の収率で対応する生成物を与える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的では、初年度で複素環化合物との炭素-水素結合直接官能基化を達成している予定ではあるが、ルテニウム-パラジウム複核錯体の設計合成に焦点をあて研究を推進した結果、様々な種類の配位子を有する錯体の合成を達成でき、その光物性を明らかにすることができた。 また、クロスカップリング反応においては、合成した触媒を用いることで可視光が反応を促進するといった知見が得られており、これらの結果を基に第二世代の触媒を合成することで本研究の目的も同様に達成可能ではないかと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度では錯体の電気化学的特性の調製を主樽目的として様々な配位子を有するルテニウム錯体の合成を達成し、その触媒前駆体とパラジウム錯体とを反応させることで目的のルテニウム-パラジウム二核錯体の合成を完了した。 本年度は、昨年度に引き続き可視光増感ユニット、リレーユニット、反応活性UNITを組み合わせ、触媒の合成を行なう。また合成した錯体を利用した、複素環化合物の炭素-水素結合の直接官能基化反応へと適用しその活性と相関を明らかにする。 予備的知見として本研究にて合成した錯体を利用することで、通常のクロスカップリング反応(鈴木-宮浦カップリング反応など)が可視光を外部照射することで促進されることを明らかにしている。すなわちこの結果は、本研究により合成したルテニウム-パラジウム複核錯体が可視光からの光エネルギーを化学エネルギーへと変換していることが示唆される。 この予備的知見から錯体の合成については可視光をより効率的に化学エネルギーへと反感可能な触媒設計を行うことが反応達成の鍵になると考えている。すなわち昨年度合成した種々の錯体でカップリング反応を行ない、その構造と活性との相関を明らかにし、分子軌道計算と相補的に結果を組み合わせることで分子内での効率的なエネルギーの授受を達成可能な錯体の設計を行ない合成する。 また、複素環化合物の炭素-水素結合の直接官能基化反応に関しては上述の錯体合成と平行して試み、最適な可視光波長、溶媒、塩基などの外部要因の最適化を同時に行う予定である。
|