2014 Fiscal Year Annual Research Report
遷延性意識障害患者の生活行動回復の看護介入の構築-覚醒低下時の端座位姿勢の解析-
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26893245
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
宮田 久美子 北海道科学大学, 保健医療学部, 講師 (60736099)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 覚醒 / 姿勢 / 端座位 / 看護介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は覚醒状態が低く、さらに身体の可動性が低下した遷延性意識障害患者が、自力で生活行動を行うための基本的な姿勢である座位姿勢を獲得する看護介入を構築することを目的とした基礎研究である。その内容は、健康な成人が端座位の姿勢において覚醒が低下すると、姿勢制御の要素である定位と安定性が低下することを明らかにする、逆説的検証を行うことである。平成26年度は、臨床応用が可能な端座位姿勢の測定手法を探ることを目的とした。 課題1として、健康な成人において、覚醒が低下する状態の端座位姿勢の定位の測定方法を検討した。その際、本研究の手法を今後に臨床において応用的に適用することを第一義的に検討した。遷延性意識障害患者が療養する場の調査を行い、環境上の特性から複雑な装置を用いない方法が肝要であることと考えられた。さらに、文献検討から、特に高齢者において矢状面での姿勢の角度が生活の自立性に関連していることが確認された。そのため、端座位姿勢の定位を明らかにする目的において、1台の家庭用ビデオカメラによって矢状面の端座位姿勢を撮影し、その映像の二次元の姿勢を分析することを手法とした。また、臨床においては照度や物的環境が複雑であり、被験者の身体各部を正確に抽出し測定することが困難な状況である。そのため臨床においても、測定部位の抽出が可能となるマーカーの種類と測定部位について検討中である。 課題2として、覚醒が低下する状態の端座位姿勢の安定性の測定方法を検討した。頭頂部に装着した3軸小型加速度計によって、頭部の揺れの大きさ、速度、方向が測定可能であることが確認できた。 本研究におけるこれらの測定手法は、遷延性意識障害患者の療養する臨床においても応用が可能であることに意義がある。さらに、この結果は遷延性意識障害患者が座位になることの看護介入の開発と評価の一助となる重要性を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成26年度および平成27年度の2年で、健康な成人の覚醒低下時における端座位姿勢の定位と安定性を明らかにすることを目的とする。 このうち平成26年度は、端座位姿勢の定位と安定性を測定し、分析するための手法の確立を計画とした。本研究の測定手法は、今後の臨床における応用研究として同様の手法を用いることの可能性を考慮し検討した。 本研究のデータ収集の環境は生活環境に準じ、生活騒音を遮断せず、照度は一般的なブラインドの開閉において調節することとした。本研究の今年度の課題1は、覚醒低下時の端座位姿勢の定位を測定する手法の検討であった。その手法として、複雑な装置や広範囲な測定環境を必要としない二次元動作分析を適用した。二次元動作分析のためのデータは、被験者の端座位姿勢の頭頂部から接地した足部までの矢状面を固定した家庭用ビデオカメラで撮影した動画とした。また、端座位姿勢の矢状面において、その変化を測定するために適切な身体部位および部位のマーキングについて検討を進めている状況である。さらに、覚醒低下に伴う端座位姿勢の変化の分析についても検討を進めている。また本研究の今年度の課題2は、覚醒低下時の端座位姿勢の安定性を測定する手法の検討であった。その手法として、頭頂部に小型無線加速度計を装着し、3軸方向の加速度を測定する手法を確立した。分析方法については検討を進めている状況である。 これらのことから、本研究の平成27年度における研究計画の達成度は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は平成26年度および平成27年度の2年で、健康な成人の覚醒低下時における端座位姿勢の定位と安定性を明らかにすることを目的とする。このうち平成27年度は、平成26年度に構築した手法を用いて、健康な成人30名の端座位における覚醒の低下と姿勢の定位、および安定性の関係性を明らかにすることを目的とする。被験者は、研究者が所属する教育機関において公募し、書面と口頭によって研究の目的や意義、危険性とその対処方法、情報の保護について説明し、同意書を得る。 平成26年度に構築した端座位姿勢の定位の測定手法は、被験者の端座位姿勢の頭頂部から接地した足部までの矢状面を、固定した家庭用ビデオカメラで撮影した動画から二次元動作分析を行うことであった。一般に矢状面の体幹の形状の計測は、脊椎の自然なS字カーブに従って、第7頸椎―第7胸椎の胸部、第7胸椎―第2仙椎の腰部がなす角度が指標とされる。本研究においては、胸部と腰部に加えて、覚醒が低下した時に動揺があることが報告されている頭頂―C7の頭部、および座位の自立性に関与することが報告されている上前腸骨棘―第2仙椎を計測の部位として設定する。これらの計測部位に複雑な生活環境でも抽出可能なマーカーを検討し、被験者に対して測定を行う。 さらに、端座位姿勢の安定性は、頭頂部に小型無線加速度計を装着し、3軸方向の加速度を測定する手法を、平成26年度に構築した。平成27年度はその手法に則り、被験者に対して測定を行う。 さらに、覚醒の低下について、開閉眼を指標とすることを計画した。しかし、覚醒が低下する時点の確認が困難であった。そのことから、簡易脳波形を用いたα波、β波を指標とした覚醒の低下の確認を行うことを検討中である。
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