2014 Fiscal Year Annual Research Report
助産師を取り巻く権力構造―授乳支援に焦点を当てて―
Project/Area Number |
26893295
|
Research Institution | Japanese Red Cross College of Nursing |
Principal Investigator |
濱田 真由美 日本赤十字看護大学, 看護学部, 助教 (30458096)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 授乳支援 / 助産師 / 母乳育児 / 権力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、医師や母親、同僚といった他者との関わりのなかで母乳育児支援に携わる助産師が、どのような権力構造におかれているのかを質的研究結果の統合(メタ・サマリー)によって明らかにするものである。本研究を通して、母子の利益を守る授乳支援が実現し難い状況の背後にある、同僚や他職種、母親との権力構造の複雑性が明らかになることにより、現代社会の母親を支える授乳支援を実現するための打開策を提言することを目指す。 平成26年度は、Sandelowski & Barroso(2007)による『Handbook for synthesizing qualitative reseatch』とその関連文献から質的研究におけるメタ・サマリーの具体的な手法を明らかにした。またメタ・サマリーを行うに当り、ターゲットとする先行研究から抽出する結果の定義を明確にした。本研究では、Michel Foucaultのいう権力、生権力をもとに「権力」を定義した。Foucaultは、権力とは、単一のものとして存在し機能しているのではなく 、至るところに網の目のようにはりめぐらされ、重層的に絡み合うことで機能しているのだといい、また生権力とは科学的知が権力の道具となり、人びとが生を自分の問題として取り上げ、管理する装置だと述べている。これらから、本研究で結果として一次研究から抽出する権力とは、単に抑圧的なものだけでなく、医師、助産師、母親それぞれの関係性に関する研究者の解釈とした。 平成27年度は、上記の定義をもとに一次研究からターゲットとする結果を抽出し、メタ・サマリーを実施していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、医師や母親、同僚といった他者との関わりのなかで母乳育児支援に携わる助産師が、どのような権力構造におかれているのかをメタ・サマリーによって先行研究の知見を外観し、その後、助産師にインタビューをおこなう予定であった。メタ・サマリーは、一次研究における結果(研究者の解釈)をごくわずかな編集作業によって抽出し、文脈や曖昧なニュアンスを汲み取りながら統合していく。こうした緻密な作業によって行われるメタ・サマリーを具体的にどのようにおこなうのかについて明らかにするためには、質的統合に関するハンドブックだけでなく、書籍の中で触れられている文献についても詳細に検討する必要があった。また、結果の抽出には、ターゲットとする結果の定義が重要であり、定義の検討にも時間を要した。そのため、進捗状況としてはやや遅れている状況であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は検討したメタ・サマリーの手順に則り、一次研究からの結果の抽出、編集、要約をおこない、授乳支援における医師や母親、助産師の権力関係について概観し、先行研究の知見をまとめていきたい。当初の計画ではメタ・サマリーを行った後、助産師にインタビューをおこなう予定であったが、メタ・サマリーの緻密な作業には拙速すぎない工程を踏む必要がある。したがって、今年度は助産師へのインタビューまではおこなわず、先行研究の知見全体を統合することによって、医師や母親、同僚といった他者との関わりのなかで母乳育児支援に携わる助産師が、どのような権力構造におかれているのかを明らかにしたい。 平成27年度はまた、当該研究の結果を報告し、社会への還元を果たすために、学術集会で口頭発表をおこなうほか、看護系学会誌にて論文を発表する予定である。
|