2014 Fiscal Year Annual Research Report
抗微生物ペプチドCathelicidinの歯髄修復作用解析
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26893301
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (70733509)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 歯学 / 細胞・組織 / 生体分子 / 免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
cathelicidin は感染刺激に応答して好中球や単球などから産生され、抗微生物作用を発揮するペプチドである。また、cathelicidinは創傷時においても産生が亢進され、宿主の細胞に作用することで創傷を促進することが報告されている。本研究では、歯損傷時におけるcathelicidinの発現および、その象牙質修復に対する関与について検討を行なった。 6週齢ラットの上顎臼歯に歯科用エンジンによる切削刺激を与えた後、固定・脱灰し、パラフィン包埋を行った。抗cathelicidin抗体および、抗Fpr2抗体を用いてcathelicidin陽性細胞および、cathelicidin受容体Fpr2の発現細胞の局在を検索した。刺激24時間後のラット歯髄切削部近傍部の前象牙芽細胞層においてcathelicidin陽性細胞の局在が認められた。また、Fpr2発現細胞は歯根膜において、その局在が認められた。 次に、6週齢ラットの下顎切歯より歯髄組織を採取し、3.5 cm dishに播種した。LPS (10~100 ng/ml)または、ヒトcathelicidin (1~10 μg/ml)を添加し、24時間後にRNAを回収し、リアルタイムRT-PCRに供した。LPS添加によりCathelicidin mRNA発現がControlと比較して有意に上昇した。また、cathelicidin添加によりDspp mRNA発現レベルが有意に上昇した。 象牙質損傷後の歯髄ではcathelicidin陽性細胞が増加することが明らかとなった。また、in vitroではLPS刺激により培養歯髄細胞のcathelicidin mRNA発現、またcathelicidin添加によりDspp mRNA発現がいずれも上昇したことから、cathelicidinが損傷後の象牙質修復に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、ラット上顎第一大臼歯の窩洞形成後のパラフィン切片を作成し、歯髄内部でのcathelicidinの局在の検討を主に行った。だが、窩洞形成における手技の未熟により窩洞形成がエナメル質内や象牙質表層までにしか到達しておらず十分に窩洞形成刺激を与えられずに歯髄内部での炎症反応が発生しなかったものや、逆に窩洞形成時に露髄をしてしまったものや歯冠崩壊をおこしてしまったものなどが多数あり、想定していた象牙質内部までの窩洞形成をおこなったサンプルを用意するのに時間がかかってしまった。 また、培養ラット歯髄細胞のリアルタイムPCR実験においては、ラット歯髄組織採取時にコンタミネーションの発生の予防や、安定した培養条件を確立するために想定以上に時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
培養ラット歯髄細胞をラットcathelicidinまたはヒトcathelicidin存在下で培養を行い、BrdU取り込みによる増殖活性を評価し、cathelicidinの歯髄細胞の増殖に対する作用の検討を行う。 cathelicidin存在下で培養した歯髄細胞のRNAを回収し、マイクロアレイによりcathelicidinによって発現が上昇する遺伝子を明らかにする。特に、血管内皮増殖因子(VEGF)および象牙質シアロリンタンパク質(DSPP)遺伝子の発現をリアルタイムPCRによって解析し、cathelicidinの血管新生および象牙芽細胞の増殖・分化に対する作用を評価する。 歯髄細胞培養系を用いてcathelicidinとcathelicidin受容体Fpr2とのシグナル伝達系を解析する。抗リン酸化ERK抗体および、抗リン酸化PKC抗体を用いてwestern blot法により解析する。 cathelicidinの臨床応用への検討を行う。ラット臼歯に露髄面を形成し、露髄部にcathelicidin溶液を滴下後、光重合レジンによって露髄部を封鎖する。術後0, 3, 7日後に上顎骨を採取し、パラフィン切片を作成する。歯髄細胞の増殖、血管新生、象牙芽細胞分化を免疫組織学的に評価する。さらに、歯髄細胞の増殖、血管新生、象牙芽細胞の分化マーカー遺伝子の発現をリアルタイムPCRによって解析する。cathelicidin投与群とcontrolのPBS投与群を比較評価し、cathelicidinの臨床応用における有用性を検討する。
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