2014 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性骨吸収に対するポリリン酸の作用―インプラント周囲炎治療法の開発に向けて―
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26893313
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
原田 佳奈 広島国際大学, 薬学部, 助教 (90609744)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | ポリリン酸 / マクロファージ / リポポリサッカライド / STAT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
インプラント周囲炎のエビデンスのある治療法はプラークコントロールしかなく、ひとたび吸収されたインプラント周囲骨の再生は困難をきたすことから、新たな治療法の確立が求められている。ポリリン酸は炎症や骨代謝を調節する作用を有しており、インプラント周囲炎の治療に応用できる可能性があるが、その作用機構には不明な点が多い。そこで本研究では、インプラント周囲炎の新規治療法の開発を目指して、炎症性骨吸収に関わるマクロファージ、破骨細胞および骨芽細胞に対するポリリン酸の作用を明らかにすること目的とした。これまでに研究代表者は、グラム陰性菌細胞壁構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)により活性化されたマクロファージにおける誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)(骨吸収促進因子)の発現をポリリン酸が抑制することを見出した。平成26年度はこのポリリン酸の作用機構を明らかにするため、iNOSの発現制御に関わる分子(MAPK、STAT1、細胞内カルシウム)に対するポリリン酸の作用を検討した。その結果、ポリリン酸は、LPSにより活性化されたマクロファージにおけるMAPK(ERK、p38、JNK)のリン酸化には影響を与えなかったが、STAT1のリン酸化を抑制することが明らかとなった。細胞内カルシウム濃度に対しては、ポリリン酸は単独では影響を与えなかった。また、カルシウムイオノフォアであるイオノマイシンによる細胞外カルシウム流入に及ぼすポリリン酸の影響を検討したが、カルシウム流入を抑制する作用は認められなかった。以上の結果から、マクロファージにおいて、ポリリン酸は少なくともSTAT1のリン酸化を抑制することにより、LPSによるiNOSの発現誘導を抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、ポリリン酸がどのようにしてLPS活性化マクロファージにおけるiNOS発現を抑制するのか明らかにするため、iNOSの発現制御に関わる分子に対するポリリン酸の作用を検討することであった。これまでに、ポリリン酸はマクロファージにおいてLPSによるSTAT1リン酸化を抑制することを発見し、ポリリン酸の作用機構の一端を明らかにすることができた。したがって、本研究課題の達成度はおおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に行った検討により、LPS活性化マクロファージにおけるポリリン酸の作用機構の一端が明らかとなった。今後は破骨細胞および骨芽細胞に対するポリリン酸の作用を検討する。破骨細胞に対する作用については、破骨前駆細胞にポリリン酸を処置し、破骨細胞分化に関わる分子(NF-κB、MAPK、カルシウムオシレーション)に対するポリリン酸の作用を検討する。また、炎症に関わるLPSやTNFで刺激した骨芽細胞にポリリン酸を処置し、分化、石灰化、破骨細胞分化因子RANKLの発現、破骨細胞分化抑制因子オステオプロテジェリンの発現などがどのように変化するか検討する。
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