2014 Fiscal Year Annual Research Report
骨ミネラル輸送体TRPM7を介した歯槽骨形成及び再生機構の解明
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26893319
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
堤 貴司 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (70736652)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 歯学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の歯科治療では様々な生体材料による歯槽骨再生が図られているが、再生療法による骨新生やその後の骨リモデリングへの受け渡し等のメカニズムは詳細には判明していない。TRPM7 はCa2+,Mg2+透過型陽イオンチャネルであり、ミネラル輸送を行う一方で、独特のキナーゼ活性領域を持つユニークな分子で、多様な生理作用を示すことが知られている。私は、既にTRPM7 が歯の石灰化に関わることを示唆するデータを得ており、硬組織形成に関わる分子として注目している。本研究の目的は、TRPM7 に着目することにより歯槽骨形成のメカニズムと再生療法によって誘導される骨新生機構を解明し、より効率的な歯槽骨再生療法に結び付けることであり以下の3点を明らかにすることを目標としている。 ① TRPM7 が、脛骨および顎骨の骨質に与える影響を評価する。 ② 骨組織の成長・発達におけるTRPM7 の役割を解析する。 ③ 再生された歯槽骨に対するTRPM7 の応答を詳細に解析する。 骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HA)やリン酸三カルシウム(b-TCP)を応用したものが代表的であり、骨芽細胞の接着性・増殖能および骨芽細胞分化誘導に関する研究はなされているが、その際にどのような細胞内シグナルが関与しているのか解明されてはいない。TRPM7 は、単なるミネラルの輸送体として機能するのでなく、様々な生理作用を持つと推測されるキナーゼ活性領域を有するイオンチャネルである。さらに、完全に欠損すると胎生致死となる因子であることが分かっており、その生体への影響の大きさが伺い知れるため、骨代謝に関与する研究において今後重要な因子となる可能性は高い。今回の、研究で歯槽骨形成・石灰化のメカニズム解明の一端を担うことができれば、歯槽骨再生の領域に新しいポジティブな知見をもたらすことができると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TRPM7aキナーゼ変異マウスを用いた解析において、研究課題1.”TRPM7が、脛骨および顎骨の骨質に与える影響の評価”に関しては、データの収集が進みつつある。研究課題2.”骨組織の成長・発達におけるTRPM7の役割の解析”は、本学の動物実験施設における受け入れ体制が整うまでの期間が長引き、様々な週齢のマウスを十分数揃えることができず、解析は当初のスケジュールより遅れている。研究課題1についても確定的な結論を導くには、もう少しサンプル数を増やす必要があると思われるが、直ちに実行できる状態ではない。マウスの導入遅れにより研究課題1,2に関しては、実験スケジュールが計算しにくい状況となったため、計画を変更し研究課題3”再生された歯槽骨に対してTRPM7が示す応答の解析”に取り組んだ。まずは、細項目”マウス歯槽骨再生モデルの構築”を優先して開始し、in vitroの実験系の確立に努めた。細胞培養用b-TCPディスク上に骨芽細胞を培養し、石灰化誘導を行った状態でのTRPM7等のカルシウムトランスポーターおよびNAPI-IIa,Pit1等のリン酸トランスポーターの発現をPCRにて解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroの実験を優先的にすすめ、western-blottingやELISAも行う。また、間葉系幹細胞を使用するなど、その他の細胞株の動態の解析を行うこととする。現在は、b-TCPを利用した解析を行っているが、ハイドロキシアパタイト等の骨補填材やマトリゲル等の素材を用いた実験も追加して行う。In vivoの実験系の確立は、in vitroの実験と並行して進めていくこととする。最終的には、マウス歯槽骨の再生モデルを確立すべきであるが、まずは頭蓋骨の骨欠損モデルを作製し、TRPM7・aキナーゼの変異がもたらす影響を解析する方向でアプローチする方が実験系の立ち上げは円滑に進むと思われる。頭蓋骨欠損モデルに関しては、研究室内に十分な技術を持った人間が複数所属しているため、相談・協力は容易にできる状態にある。また、TRPM7aキナーゼ変異マウスの導入の遅れに伴い、コンディショナルノックアウトマウスの作製も遅れているため、作製に成功した時点で速やかに解析に用いることとする。
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