2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26893326
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田之上 大 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (60732972)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 腸内常在菌 / IL-22 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は下記の2項目について実験を実施した。 [1] IL22産生細胞の誘導に対する腸内常在菌の必要性検証 IL22産生細胞の誘導に及ぼす腸内常在菌の必要性を、無菌マウスの腸管IL22産生細胞を解析することで検証した。その結果、正常な腸内細菌が存在するSPFマウスにくらべ、無菌マウスではIL22産生細胞数が減少していた。この結果から、IL22産生細胞は腸内常在菌依存的に誘導されることが示唆された。また、誘導に特定の細菌分画が影響しているのかを異なるスペクトラムを持つ抗生剤を投与する事で検討した。具体的には、グラム陽性菌に対して抗菌作用を持つバンコマイシン、グラム陰性菌に対して抗菌作用を持つポリミキシンを投与した。その結果、バンコマイシン投与マウスではIL22産生細胞数の減少が見られたのに対し、ポリミキシン投与マウスでは変化が見られなかった。この結果から、腸内常在菌のうちグラム陽性細菌がIL22産生細胞の誘導に主たる役割を担っていることが示唆された。 [2] 細菌由来の誘導責任成分の探索 細菌の構成成分または代謝産物の認識レセプターを欠損したマウスにおけるIL22産生細胞数を調べた。Toll-like、NOD-like、Dectin1レセプターシグナル(MyD88, RIP2、CARD9)、短鎖脂肪酸を認識するGPCR(Gタンパク質共役受容体)、AhR(芳香族炭化水素受容体)などの欠損マウスを解析した。その結果、MyD88欠損マウスでIL22産生細胞の減少が認められた。一方、RIP2、CARD9、GPR84欠損マウスで細胞数に変化が見られたなかった。AhR欠損マウスでは、IL22産生細胞の前駆細胞そのものが減少していた。この結果は既報論文とconsistentである。以上から、IL22産生細胞はMyd88シグナル依存的な経路を介して誘導されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の交付申請書に記載した研究実施計画のうち、おおむねの実験が遂行できた。また、当初解析を予定していた以外の遺伝子欠損マウスについても解析を行うことが出来た。また、平成27年度に実施予定の実験内容についても予備実験を行うことが出来た。一方、研究方策を部分的に変更したため、実施計画に記載した項目の中で未達成の内容があった。しかしながら、平成26年度に実施した研究内容で論文にまとめ、既にsubmitを完了しており(現在リバイス実験中)、平成27年度中にはacceptを目指す。以上をふまえ総合的におおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度ではIL22産生細胞を誘導する腸内常在細菌の同定し、その誘導メカニズムの解明を試みる。 1.IL22産生細胞の誘導する腸内細菌の同定 : IL22産生細胞を誘導する腸内細菌を同定する。具体的には、様々な種類の細菌を別々の無菌マウスに投与し(ノトバイオートマウスを作製)、IL22産生細胞数をフローサイトメトリーにて解析する。投与する細菌として、マウスおよびヒト由来の腸内常在菌(Clostridia、セグメント細菌など)を予定している。無菌マウスと比べてIL22産生細胞数が増加した細菌を誘導細菌とする。 2.IL22産生細胞のキャラクタライズ (表面マーカー・他のサイトカイン) : 同定細菌によって誘導されるIL22産生細胞の特徴を検討する。具体的には細胞が発現している表面マーカーや転写因子などをフローサイトメトリーにて調べる(NKp46, CCR6, Tbet, Gata3)。その発現パターンから、既存に報告されている細胞サブセットと比較し、細胞機能を予測する。また、細胞のRNAシーケンスを行い、転写因子の網羅的解析も行う予定である。 3.IL22産生細胞の誘導メカニズムの探索 :IL22産生細胞の誘導機構を検討する。一つは関連するシグナル伝達を検証する。これまでにIL1およびIL23レセプターシグナルの重要性を示唆する論文が報告されている事から、IL1RおよびIL23ノックアウトマウスにおけるIL22産生細胞数を検討する。さらには、食餌成分の影響を調べる予定である。マウスに成分含量が異なる様々な種類の餌を投与し、そのIL22産生細胞を解析する事で、誘導に必要な食餌成分についても考察を行う。
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Research Products
(1 results)