2014 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類養育行動の神経基盤の進化:コモンマーモセット内側視索前野の解剖・機能的解析
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26893327
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
篠塚 一貴 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (50549003)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コモンマーモセットを用いて親子関係の神経機構を解明することを目指し、げっ歯類での研究から特に重要と考えられる内側視索前野の機能回路マッピングを行うことを目的とした。初年度は、マーモセット内側視索前野の免疫組織化学的検討およびマーモセット養育行動リストの作成を実施した。免疫組織化学的検討では、複数の抗体を用いてマーモセット脳の染色を試みた結果、オキシトシン、NeuN、SMI32、カルビンジン、コリンアセチルトランスフェラーゼの各抗体について、比較的良好な染色像を得た。マウスで内側視索前野に多く分布することが分かっているその他の分子については、良好な染色像を得るためにさらに条件検討が必要であった。養育行動リストの作成については、初年度に4つのペアでのべ6回の出産があり、十分な行動観察を実施することができた。子の生後1ヶ月程度までの間に、親(きょうだい)による子の回収テスト、家族内で子を背負う時間の割合、家族の自然な行動観察を継続的に実施し、2ヶ月齢程度から餌の分配テストを継続的に実施するというスケジュールで実験を実施し、基礎的なデータを蓄積した。この中で、親だけでなく年長のきょうだい個体も養育行動を示すことを改めて確認し、今後の神経基盤を検討する実験で、きょうだい個体を被験体として用いることができることを明確にした。また、年長の姉個体1頭に対して、内側視索前野に興奮性神経毒であるNMDAを投与し、局所的な破壊の前後での養育行動の変化を観察した。結果、片側の内側視索前野の一部の損傷が認められ、子の回収後の背負い時間の減少など、養育行動が悪くなることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、免疫組織化学的検討および養育行動リストの作成を実施する計画であったが、どちらもおおむね実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫組織化学的検討については、抗体によっては良好な染色像が得られていないものもあり、引き続き条件検討を実施するほか、in situ hybridizationを行うことも検討する。検討対象とする養育行動は初年度にほぼ確定したので、今後は内側視索前野の損傷や神経活動の一時的抑制によって、これらの行動がどのように変化するのかを検討する。
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