2007 Fiscal Year Annual Research Report
レニナンギオテンシン系と呼吸器感染症重症化のクロストーク
Project/Area Number |
30281687
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
石坂 幸人 Research Institute, International Medical Center of Japan, 難治性疾患研究部, 部長 (90184514)
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Keywords | SARS-CoV / 呼吸器重症化機構 / スパイク蛋白質 / TNF-α変換酵 / シェデイング / MARCKS |
Research Abstract |
2003年から2004年にかけてアウトブレークが生じたSevere acute respiratory syndrome-coronavirus(以下SARS-CoV)による感染では全世界の約8000名が罹患し、その内の約10%が急性呼吸器切迫症候群(ARDS)で死亡した。感染の重症化機構として2006年、SARS-CoVの受容体である2型アンギオテンシン変換酵素(以下ACE2)の発現低下の重要性が提唱されたが、その機序並びに意義は不明であった。申請者は、SARS感染に伴うACE2の発現低下が宿主側因子であるTNF-α変換酵素(TACE:TNF-α converting enzyme)による切断(シェデイング)によって誘導されること、SARS-CoVがACE2を介してTACEを活性化することでTNF-αの分泌を誘導する一方、TACE機能がウイルス感染にも重要な役割を示す事を証明した。同時に、病原性の弱いコロナウイルスとして2004年に同定され、その後ACE2を受容体として感染することが報告されたNL63-CoVに関する解析も行った。その結果興味深いことに、NL63-CoVはTACEを活性化せず、ACE2細胞外ドメインの切断やTNF-αの分泌を誘導しないことが明らかとなった。NL63-CoVは主として"風邪症候群"を誘発するのに対してSARS-CoVはARDSも含めた重篤な呼吸器症状を引き起こす。このような臨床症状の違いはACE2に対する両者の作用の違いによる可能性が示唆された。TACE活性化に引き続く細胞内シグナル伝達について解析した結果、PKCの基質で喘息発作の際に誘導されるMARCKS(Myristoylated alanine-rich C kinasesubstrate)のリン酸化がSARS-CoV由来スパイク蛋白質により惹起されることも見いだしている
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