1985 Fiscal Year Annual Research Report
地場産業都市における社会関係構造の変動と地域文化の諸問題
Project/Area Number |
59410006
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Research Institution | MEIJIGAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山中 一郎 明治学院大学, 社, 教授 (30062110)
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Keywords | 地場産業 / 社会的ネットワーク / 中小零細企業 / 地域文化 / 構造不況地域 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に実施した京都府丹後地域(ちりめん織物)と新潟県三条市(金物製造)の実態調査の結果を集計分析し、各研究班の分析結果をとりまとめる作業を行なった。最終的な報告はまだ完成していないが、当面以下の様な点が明確になったといえる。 1.両地域とも古くから形成された伝統的な地場産業を核として、地域社会を発展させてきたため、これらの集積が有する独自の生産・流通の構造と、それを基盤とする経済的・社会的ネットワークと自然環境条件と一体となった地域風土・地域文化を醸成させてきた。丹後地域においては、女性労働を中心的担い手とする広範な賃機の存在が、京都西陣問屋につながる親機層の生産流通支配を支えている。三条地域では、刃物・工具等多彩な品種に別れた工場集積が、製品流通を握る問屋との分業体制を形成するが、家内労働に依存する伝統的な金物職人と、企業的な中小工場の間に層としての分化傾向がみられる。 2.両地域とも低成長下の地場産業の不況・危機の中で、従来の産地構造を維持できなくなっており、企業間の再編成や競合と伝統的な製品や市場からの脱皮を迫られている。地域住民の側からは、行政や業界団体などの力で地場産業の再生を期待する一方で、従来の生産流通支配の構造を見限り、独自の産業を志向する動きもみられるが、全体としては悲観的な将来像を抱いている。 3.このような産業の変動は、従来の地域内の社会的関係構造を崩しつつあり、地場産業の存在ゆえに確保されえた就業機会や地域生活の安定が、全般的都市化を背景として生活水準の相対的な向上と、生活環境・福祉等の改善充実を切実なものとする反面、不況の進行で行政の対応が遅れ、犯罪・青少年非行、後継者難などの問題状況が次第に深刻化する傾向にある。地域文化の維持・発展もこのような地場産業の動向に大きく左右されるものと考えられる。
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