1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
59430019
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野桜 俊一 大阪大学, 理, 教授 (90028085)
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Keywords | 光誘起電子移動反応 / 両親媒性高分子電解貭 / クロモホア / 分子設計 / 励起状態自己失活 / 静電ポテンシャル / クロモホア個室化 / 疎水性ミクロドメイン |
Research Abstract |
1.高分子連鎖上に配列した光増感基(クロモホア)間の相互作用を制限し、励起状態の自己失活を抑制する目的で、クロモホアの個室化、いわゆる"Compartmentalization"を意図した分子設計を行った。クロモホアとしてはフェナントレン,ピレン,及びポルフィリンを用いた。光化学過程に関与しない残基、即ち構造材として、ラウリル基,コレステロール基,フェニル基を用い、モル比で約1/10量のクロモホアと共に電解貭高分子主鎖にペンダント結合した。この両親媒性高分子は水溶液中において構造の組織化を示し、形成した疎水性ミクロドメイン内において、クロモホアは前記の構造材クラスターに取り込まれて孤立して存在していることが分光学的に確認出来た。特に、フェニル基を構造材に用いた場合、この効果が最も顕著であり、自己失活の抑制効果が極めて大きいことを見い出した。これらの高分子について、ビピリジニウム化合物を電子受容体として用い、レーザーホトリシスにより光誘起電子移動反応を詳しく研究中であるが、このような分子設計の結果、反応の量子収率が著しく向上した事実をすでに確認している。その原因として、自己失活の抑制のみならず、クロモホアと電子受容体との間の基底状態相互作用の抑制効果も大きく寄与していることが明らかになった。 2.両親媒性高分子電解貭の水溶液中における構造組織化現象を詳しく研究した結果、高分子中の疎水性残基がπ電子系から成る疎水基の場合に、の系疎水基に比べ明確な構造組織化が起こることを認めた。 3.メロシアニン色素残基を高分子電解貭主鎖に共有結合し、色素残基の酸塩基解離定数を分光学的に決定する方法により、高分子電解貭主鎖近傍の局所静電ポテンシャルの定量評価法を確立した。その結果、全解離状態にある高分子イオン主鎖近傍には界面活性剤ミセルのスターン層に相当する強い電場が形成されていることが判明した。
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