1986 Fiscal Year Annual Research Report
卵子成熟過程の高感受期における物理的エネルギーの安全性評価
Project/Area Number |
59490003
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
美甘 和哉 旭川医大, 医学部, 教授 (10002221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立野 裕幸 旭川医科大学, 医学部, 教務職員 (80163492)
田中 邦雄 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (20041840)
上口 勇次郎 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (60091568)
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Keywords | チャイニーズハムスター / 新生仔 / X線 / 超音波 / 卵細胞死 / 生殖寿命 / 晩発効果 / 発生能 |
Research Abstract |
チャイニーズハムスターでは、生後6日の卵巣卵の殆どが放射線高感受性の複糸期〜網糸期に達している。この時期に50,100ラドのX線を照射された動物では、急性の卵細胞死が起こり、卵子数が著しく減少した。また、性成熟は遅れ、生殖寿命も甚だ短かった。ところが、10.25ラドの照射では急性の卵細胞死は殆ど認められず、性成熟も遅れることはなかった。これらの動物は被曝後1年以上を経た現在でも生殖能を保持している。従って、生殖寿命の正確な値を得るため継続的に飼育、調査している。 60年度の研究経過の中で、10.25ラド照射群において着床前死亡率が高い傾向にあることを報告した。この点に関し、データを増やして慎重に検討したところ、両群とも対照群との間に統計的有意差のないことが確認された。また、胎仔死亡率、異常胎仔数も増加していなかった。急性卵細胞死を蒙った50,100ラド照射群でも同様の結果が得られた。従って、新生仔期に10〜100ラド程度のX線照射をうけても、生き残った卵子は正常な発生能を持っていることが明らかになった。以上の成果のうち、急性の卵細胞死と生殖能に関して一部ではあるが、すでに論文として発表した。 一方、超音波についてこれまで明らかになったことは、(1)高出力(3.25W/【cm^2】)でもX線照射でみられたような急性の卵細胞死は起こらない、(2)性成熟の遅延や生殖寿命の短縮はない。この2点である。超音波照射が卵子に対し晩発性の発生障害を誘発するか否かについては、現在調査中であり、結論するまでには至っていない。超音波の研究結果は未発表である。 本研究の内容は細胞学、生殖生理学、発生学、遺伝学と多岐にわたっており、しかも長期間に亘って行う性質のものが多いので、当初予定した研究を完了させるにはなお可成りの時間が必要である。従って、研究成果の発表も62年の後半から63年度になる予定である。
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[Publications] H.Tateno;K.Mikamo: Int.J.Radiat.Biol.45. 139-149 (1984)
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[Publications] H.Tateno;K.Mikamo: Jpn.J.Hum.Genet.30. 140 (1985)
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[Publications] H.Tateno;K.Mikamo: Int.J.Rabiat.Biol.49. 121-130 (1986)
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[Publications] H.Tateno;K.Mikamo: J.Radiat.Res.27. 44 (1986)
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[Publications] 立野裕幸,美甘和哉: "放射線の影響評価研究の現状と展望" (財)原子力安全研究協会, 312 (1985)