1986 Fiscal Year Annual Research Report
同時計数メスバウアー分光法による核壊変に伴う化学効果の研究
Project/Area Number |
59840016
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
荘司 準 筑大, 化学系, 講師 (90015553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 李紀 筑波大学, 化学系, 講師 (70015775)
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Keywords | 発光メスバウアー分光法 / 同時計数 / 大環状コバルト有機錯体 / 非平衡 / 動的状態 / アンテモン化合物 / テルルの化学状態 / ランダムコインシデンス |
Research Abstract |
測定機器に関する面では、組み上げた時間微分型同時計数メスバウアー分光装置を慎重に調整しつゝ、主に液体窒素温度でのすこぶる長時間に亘る連続測定が、エネルギー軸上でのドリフトなしに安定に行えるよう常に努力した。 試料としては、引き続き【^(57)Co】で標識したコバルト(【II】)のクロロフィル類似の大環状有機錯体につき【^(57)Co】からEC壊変によりこのマトリックス中に生成する【^(57)Fe】の化学状態に非平衡な動的状態が存在するかどうか測定を試みたが、測定の際の蓄積時間の足りなさが主因と思われるが、得られたスペクトル上からは統計的変動の巾を越えて明確な判定を下すことはできなかった。また【^(125)Sb】標識のアンチモン化合物では、Sb(【III】)の化合物では生成してくる【^(125)Te】の第一励起準位(メスバウアー準位)での化学状態は、ほんとどTe(I【V】)だけに限られてしまうことが判明したので、湿式化学分離のデータを参考として、【^(125)Sb】からβ壊変により生成する【^(125)Te】の化学状態が、適当な割合で(【IV】)価と(【VI】)価に分布するような化合物を選び(たとえばN【H_4】Sb【F_6】など)、【^(125)Sb】による標識アンチモン化合物の合成を行い、【^(125)Sb】からこのマトリックス中でβ壊変により【^(125)Te】の第一励起準位に至ったときのTeの化学状態に、そこに至る壊変経路(複数存在する)の差が認められるかどうか測定を試みているが、まだ測定時間が不足しているようで、目的とする効果の有無を明確に判定するには至っていない。いずれの場合も、同時計数法の宿命とも言える偶発的同時計数(ランダムコインシデンス)を低くおさえねばならぬことから、メスバウアー測定としては異例の微弱線源(たかだか数十nCi)を用いねばならず、さらに長時間の測定を続けて統計的にみてきれいなスペクトルが得られれば、目的とする効果の有無の判定が可能になるであろう。
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