ヒト培養肝実質細胞の肝炎診断・肝炎ワクチン・肝臓薬開発への応用

1986 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 59870013
• Research Institution: Tokushima university
• Principal Investigator: 中村 敏一 徳島大, 医学部, 助教授 (00049397)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 寺本 英雄 大塚アッセイ研究所, 研究員 ; 野田 千征子 徳島大学, 医学部, 講師 (40035506)
• Keywords: ヒト初代培養肝細胞 / 肝炎 / 肝炎ウィルス / 肝臓薬

Research Abstract

今年度は本研究課題最終年度に当り、ヒト初代培養肝細胞の応用研究の中でも最も社会的にも重要な肝炎ウィルスのin vitro感染系ならびにそのワクチン開発への応用のための基礎研究を行った。この目的のための最重要基礎研究は1つにはヒト肝細胞のin vitroでの増殖条件の確立と、もう1つはヒト初代培養肝細胞を用いたin vitroでの肝炎ウィルス感染系の確立である。最初に、ヒト肝細胞のin vitroでの増殖系の確立をめざして研究を行った。その結果、成人肝組織片(バイオプシ)をすでに本研究期間に確立した2段階消化法、すなわちコラゲナーゼ消化とデスパーゼ消化法によって元気なヒト肝細胞を分離し、培養皿に単層初代培養を行った。このようにして初代培養されたヒト肝細胞は細胞密度の粗な条件(3×【10^4】細胞/【cm^2】)で培地にプロリンが添加されていると、EGF,インスリン,肝細胞増殖因子などの肝細胞の増殖因子によってDNA合成を開始し、増殖することが明らかになった。上記三者増殖因子共存の最大増殖促進条件下では成人肝細胞はその約30〜40%がS期に入り細胞増殖を行う。ヒト初代培養肝細胞プレートを肝炎診断や肝臓薬スクリーニング、そして非A非B肝炎ウィルス同定のための測定系に用いるためには80%近い肝細胞がいっせいに増殖する培養条件が望ましい。その努力を今後も続けていく必要がある。さて、肝炎ウィルスのin vitro感染の試みはまた始めたばかりであり、はっきりした結果を得ていないが、一番の問題点はたとえばB型肝炎ウィルスを使って行うと、肝炎ウィルスが感染したヒト肝細胞を同定する確実で定量的でしかも比較的簡便な方法である。この問題は今後肝炎ウィルスの専門家との協同研究が必要であり、次の研究課題として新たに申請する予定である。

Research Products

• [Publications] Tanaka,K.;Nakamura,T.;Ichihara,A.: J.Biol.Chem.261. 2610-2615 (1986)
• [Publications] Nakamura,T.;Teramoto,H.;Tomita,Y.;Ichihara,A.: Biochem.Biophys.Res.Commun.134. 755-763 (1986)
• [Publications] Nagao,M.;Nakamura,T.;Ichihara,A.: Biochim.Biophys.Acta.863. 179-186 (1986)
• [Publications] Moor,M.A.;Nakamura,T.;Ito,N.;Ichihara,A.: Gann.
• [Publications] Moor,M.A.;Nakamura,T.;Ichihara,A.;Ito,N.: Carcinogenesis.7. 1393-1396 (1986)
• [Publications] Nakamura,T.;Teramoto,H.;Ichihara,A.: Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83. 6489-6493 (1986)
• [Publications] Nakamura,T.;Nagao,M.;Ichihara,A.: Exp.Cell Res.(1987)
• [Publications] Takai,S.;Nakamura,T.;Takehara,H.;Komi,N.;Ichihara,A.: Gastroenterology.(1987)
• [Publications] Noda,C.;Yakiyama,M.;Nakamura,T.;Ichihara,A.: J.Bicl.Chem.(1987)
• [Publications] Shimaoka,S.;Nakamura,T.;Ichihara,A.: Exp.Cell.Res.(1987)
• [Publications] Shiota,K.;Nakamura,T.;Ichihara,A.: J.Cell.Physiol.(1987)
• [Publications] Shiota,K.;Nakamura,T.;Ichihara,A.: Biochem.Intern.13. 893-901 (1986)
• [Publications] Nakamura,T.;Kitazawa,T.;Ichihara,A.: Bicohem.Bicphys.Res.Commun.141. 176-184 (1986)
• [Publications] Nawa,K.;Nakamura,T.;Kumatori,A.;Noda,C.;Ichihara,A.: J.Biol.Chem.261. 16883-16888 (1986)
• [Publications] Moor,M.A.;Nakamura,T.;Ito,N.: Carcinogenesis.7. 1419-1424 (1986)
• [Publications] Ichihara,A.;Nakamura,T.;Noda,C.;Tanaka,K.: John Libbey Eurotext/INSERM.187-208 (1986)
• [Publications] Nakamura,T.;Niimi,S.;Nawa,K.;Noda,C.,et el: J.Biol.Chem.262. 727-733 (1987)
• [Publications] 中村敏一: "実験医学,5" 107-112 (1987)
• [Publications] 中村敏一: "生化学" 147-153 (1987)
• [Publications] 中村敏一: "医科学大事典補遺.3" 講談社, 74-76 (1986)
• [Publications] 中村敏一: "続生化学実験講座" 東京化学同人, 569-594 (1986)