1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
59870071
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小倉 治夫 北里大学, 薬, 教授 (90050335)
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Keywords | シアル酸 / N-アセチルノイラミン酸 / シアリルラクトース / 免疫調節 / 癌細胞 / 細胞障害活性 / 癌転移抑制効果 |
Research Abstract |
哺乳動物の母乳、特に初乳にはシアリルラクトースが多く、乳児の免疫増強に寄与していることが知られている。人のシアリルラクトースにはNeuAcα(2→3)Galβ(1→4)Glc〔(2→3)-シアリルラクトース〕とNewAcα(2→6)Galβ(1→4)Glc〔(2→6)-シアリルラクトース〕が約85:15の比率で存在する。今回、微量成分である(2→6)-シアリルラクトースを合成した。即ち、ラクトースを原料として1、6-アンヒドロラクトースとし、6″-水酸基以外の水酸基をベンジル化した中間体を合成し、この化合物と2-クロロノイラミン酸メチルをKoenigs-Knorr反応で結合させた。この際、α-配置の化合物とβ-配置の化合物がほぼ等量ずつえられた。クロマトグラフィーで分離精製してから加水分解してアセチル基を除去して、(2→6)-シアリルラクトースとその1、6-アンヒドロ誘導体を合成した。立体配置はNMRスペクトル、CD曲線、および加水分解速度の測定を行って決定した。(小倉担当) KI-8110の実験転移性癌細胞NL-17に対する肺転移抑制効果とシアリルトランスフエラーゼ阻害活性との関連について検討した。1)KI-8110処理したNL-17細胞の総シアル酸量は有意に減少したが、増殖率生存率は影響をうけなかった。2) シアル酸は癌細胞の抗原性を遮蔽し宿主の免疫系からのがれることを可能にすると考えられるが、NL-17細胞障害活性ともKI-8110によって影響されなかった。3) ある種の癌細胞の転移で重要な役割を有することが推定されている血小板凝集因子(PAM)が、NL-17細胞にも存在していた。NL-17細胞のシアリダーゼ処理およびKI-8110処理は、PAM活性を消失させた。この事実は、シアル酸の除去が、PAM活性を消失させることを明らかにするとともに、KI-8110の転移抑制効果が、PAM活性の消失と結びつく可能性を示唆している。(大沢担当)
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