1985 Fiscal Year Annual Research Report
造血器腫瘍における癌遺伝子の発現と宿主遺伝子による修飾
Project/Area Number |
60010016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉倉 広 東京大学, 医, 教授 (60012754)
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Keywords | HTLV-1 / AML / CML / ONCOGENE / LTR / SFFV / Fv-4 |
Research Abstract |
我々の班の研究はヒトの白血病細胞を対象にするものと、白血病を惹起するレトロウィルスの遺伝学的研究に大別される。前者では骨髓性白血病及びリンパ性白血病の白血病腫瘍細胞からDNAを抽出し、そのN1H3T3に対するトランスホーム能を検出する研究が行なわれた。41例中8例がこのアッセイで陽性であり、中6例についてN-rasがオンコジンとして同定された。病型に拘らずN-rasがよく分離された点が特徴である。ヌードマウスを用いたオンコジンの分離も試みられたが、false positiveの多いのが難点であった。ヒト成人性白血病につき染色体分析で、14q11の異常が高頻度でおこり、この部位にT細胞レセプター遺伝子のあることを考慮すると興味ある。一方、この白血病細胞にはHTLV-1が殆ど常に検出されるが、高頻度に遺伝子欠損を来たし、px遺伝子が常に保存されている。この事からpx遺伝子が腫瘍化に必修と考えられていたが、in vitroのvirusの伝播でもHTLV-1の欠損が高頻度に起こり、その際pxが常に保存される事が見出された。即ちHTLV-1の生活環の特徴であることが分かった。マウスの実験系では、LTRに病型を決定する遺伝子シーケンスがあることが証明された。フレンド赤芽球症では、フレンドウイルス標品中のSFFV粒子が急性発症に関与する。このSFFVの遺伝子的な解明と、in vitro mutagenesisの発症に及ぼす影響を調べる研究がなされた。宿主因子に関してはFv-1、Fv-4等マウスの白血病発症をコントロールする遺伝子の研究が行なわれ、Fv-4遺伝子の支配されるフレンドウイルス抵抗性は、Fv-【4^r】のコードする細胞表面蛋白によることが分かった。分化と白血病ウイルス発現の関係に関する研究では、未分化細胞ではウイルスの発現はレプレッサー様のものでコントロールされているのではないかという知見を得た。
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[Publications] Mol.Cell.Biol.5-9. (1985)
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[Publications] Virology. 141-1. (1985)
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[Publications] Blood. 66-1. (1985)
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[Publications] J.Virol.(1986)
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[Publications] Int.J.Cancer. (1986)