1985 Fiscal Year Annual Research Report
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60010051
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
羽倉 明 大阪大学, 微研, 教授 (00029779)
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Keywords | 細胞変異株 / トランスフォーメーション / 癌ウィルス / 癌遺伝子 / ポリオーマウィルス / 【SV_(40)】 / Abelson白血病ウィルス / ts変異株 |
Research Abstract |
本研究は、主としてウイルスの癌遺伝子発現に関与する細胞側要因を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の結果を得ることができた。 1) 細胞変異株を用いた研究。(a) 分離したF2408(ラット由来)の変異株中にv-ras,v-src,v-fps,v-mos及びポリオーマウィルスなど、調べたすべてのv-oncogeneのtransformationに温度感受性(ts性)を示す変異株を見出した。この変異株の高温下でのtransformation効率の低下はポリオーマウイルスの場合、MTに付隨するチロシン特異リン酸化活性の低下に起因しており、この低下は正常細胞中の因子によって回復することを明らかにした。b) Kirsten-MSV によって癌化したNIH3T3細胞から2種類の正常型復帰変異株(C11,F2)を分離し、C11細胞の正常復帰にfibronectinが密接に関係していることを明らかにした。c) 3Y1細胞の増殖に関与するts株を多数分離し、これらts細胞中に【SV_(40)】・やv-H-rasによって変異形質がovercomeされる細胞変異株が存在することを明らかにした。 2) 癌化に対する組織特異性と癌遺伝子。a) 正常ヒト染色体上に2種類のv-erbB関連遺伝子(c-erbB-c-erbB-2)を見出し、c-erbB-1 に引続きc-erbB-2 遺伝子の構造を決定した。さらに同遺伝子のヒト染色体上へのマッピング(17q21)を行った。また同遺伝子はヒトの腺癌中で特異的(66例中6例)に増幅発現されていることを見出し、c-erbB-2 の過剰発現が腺癌と関わりを持つことを示唆する結果を得た。b) Abelson-MLVでtransformしたマウスB系幹細胞株AT11-2を用いて、B系細胞の分化にtransform細胞中のv-ableがいかに関与するかを検討した。その結果v-ablの発現は分化によって量的、質的な変化をうけないことを明らかにし、v-ablの発現下においてもB系細胞の分化が進行することを示した。以上のごとく、癌化や細胞増殖に関する細胞変異株の解析や、特異組織内での癌遺伝子の発現などの研究で所期の目的を達しつつある。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Cancer Res.46. (1986)
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[Publications] Nature. 319. (1986)
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[Publications] J.Cell.Physiol.123-3. (1985)
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[Publications] Mol.Cell.Biol.5. (1985)
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[Publications] Nature. 318. (1985)