1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60020016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 伊佐夫 東京大学, 農, 教授 (30011836)
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Keywords | 森林 / 自然災害 / 災害防止 / 土砂 / 崩壊 |
Research Abstract |
地質的要因からみた崩壊の調査が、広島地方(風化花崗岩、昭和60年6月豪雨)、静岡県青崩峠付近(中央構造線に伴うマイロナイト)、三重県美杉村(領家花崗岩類のマサ、昭和57年台風)で実施され、植生と地質、崩壊の関係が検討された。また、地形的要因の面からは、斜面での崩壊の発生限界、土砂の動態に関わる地形的条件や、森林における侵食パターン、根系の分布などに注目して、森林が斜面の安定化に果たす効果を評価した(京都、滋賀、岐阜、南九州の各地)。 水文条件からみた森林の防災機能には、代採などによるAo層の透水性の変化が大きく影響しているものと考えられ、土中水分計による林地での水分到達時間、到達量が測定された。 森林が直接崩壊土砂を扞止する能力も大きいと判断されるため、和歌山県有田川上流で、森林に流入している土砂量とその立木密度、群落状態、胸高断面積などとの関係が調査された。一方、森林の土砂貯留効果は、立木間隔と流下土砂粒径との関係、更に斜面傾斜の緩急と土砂の内部摩擦角との関係等によって異なるとの考えのもとに、模型実験も援用して、林木によって土砂貯留効果が発揮されるのは、傾斜角が25°〜35°程度の斜面であり、土砂の残留率は林木間のスリット間隔と土砂粒径との比によって決まることが示された。 また、過去の災害例より、崩壊土砂の移動範囲は、等価摩擦係数として、崩壊土砂の残留時剪断低抗力に間隙水圧の影響を考慮したみかけの摩擦係数を用いて、近似的に説明できることがわかり、模型林帯を設けた場合の影響について実験的に検討している。 表層崩壊に対する森林の効果は、外力に対する樹根の直接的な低抗力や、樹根による周辺土粒子の結合力の増加として現われていることが、昭和58年山陰豪雨災害のデータより明らかにされたが、これについては室内実験による検討もあわせて進められている。
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