1985 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸環境変動と低次生物生産過程におけるアミノ酸の動態に関する研究
Project/Area Number |
60030058
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上 真一 広島大学, 生物生産, 助教授 (80116540)
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Keywords | アミノ酸 / プランクトン / ベントス / デトライタス / セディメント / 低次生物生産 / 瀬戸内海 |
Research Abstract |
瀬戸内海の低次生物生産過程におけるアミノ酸の動態を明らかにするために、本年度は生物生産過程の各要素、即ち動・植物プランクトン、海水中の懸濁物、海中沈降物及び動物プランクトンの糞粒を採取し、それらのアミノ酸組成の定性的ならびに定量的調査を行なった。 合計12回のセディメントトラップ実験により捕促された沈降粒子中のアミノ酸濃度は、37.0±9.6mg/gで、アミノ酸の鉛直流束は326±77mg/【m^2】/dであった。また沈降粒子中のアミノ酸濃度とアミノ酸の鉛直流束の間には、高い正の相関関係がみられた。 懸濁物中のアミノ酸濃度は、全層の平均で381±116μg/lであり、0-10mまでは382-398μg/lの狭い範囲にあったが、15m層では307±47μg/lであり、10m以浅の80%以下の値であった。さらに懸濁物重量当りのアミノ酸濃度は、0-10mでは平均値が60-70mg/gであるのに対し、15m層では34mg/gと浅層の半分程度であった。このことから海底泥直上に浮遊している懸濁物は、上層に存在する懸濁物とは異なる性格を有していることが予想される。 瀬戸内海に出現する代表的な11種の動物プランクトンのアミノ酸組成を明らかにした。そのうちカイアシ類8種のアミノ酸組成は互いによく類似しており、またそれらの鶏卵蛋白に対する必須アミノ酸指数(EAAI)は平均すると約80となり、よくバランスしていると言える。アキアミAcetes japonicusやマントヤムシSagitta crassaとカイアシ類のAcartia erythraea,A.clausi,Pseudodiaptomus marinus,Calanus sinicus,Sinocalanus tenellus,Calanopia thompsoni,Centropages yamadai,Paracalanus parvusの組成を比較すると、A.japonicusとS.crassaではメチオニンが高濃度で存在しており、カイアシ類ではグリシンが多量に存在することが特徴的であった。これらのアミノ酸組成の違いは食性の違いを反映していることによるのかもしれない。
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