1985 Fiscal Year Annual Research Report
高度好塩菌の光エネルギー変換分子;バクテリオロドプシンの機能と構造
Project/Area Number |
60045009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳永 史生 東北大学, 理, 助教授 (80025452)
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Keywords | 高度好塩菌 / バクテリオロドプシン / プロトンポンプ / 光反応中間体 / 光エネルギー変換 |
Research Abstract |
高度好塩菌のバクテリオロドプシン(BR)は細胞膜に存在し、光駆動プロトンポンプの機能を持つ、即ち、光エネルギーを電気化学的エネルギーに変換する一種のエネルギー変換素子である。BRが光を吸収すると、数種の吸収スペクトルの異なる中間体を経て元に戻る。この光反応に伴ってプロトンが膜の一方から他方へ運ばれる。本研究ではこのプロトンポンプの分子機構を明らかにすることを目的とした。 本年度は酵素(キモトリプシン)処理したBR(以下ch-BR)及び未処理BR(native BR)を用いて中間体の生成・崩壊、プロトンの取り込み等について比較検討した。M中間体の崩壊は速度定数の異なる2成分から成る。遅い成分の速度はch-BRでは遅くなっているのに対し、速い成分の速度は両者で大きな差がない。M中間体の両成分の量の温度依存性を比較すると、速い成分については、ch-BRでは温度が高くなるほど増加する傾向にあるが、nativeではほとんど変化しない。また、遅い成分については、native BR.ch-BR共に温度が高くなるほど減少する。M中間体の崩壊の速い成分の速度とO中間体の生成速度はすべての温度でほぼ一致する。しかし、O中間体の量は温度が高くなるにつれて増加していくのに対し、M中間体の速い成分の量はほとんど増加しない。これは吸光係数の温度変化だけでは説明できず、M中間体の崩壊の速い成分に2つあり、O中間体を経る成分と直接BRに戻る成分のあることを示唆する。ch-BRもプロトン活性を持つ。プロトンの膜への再吸着速度はnative BRとch-BRでほとんど差が見られない。プロトンの吸着量の温度依存性を見ると、共に温度が高くなるにつれ、その量が減少している。しかし、ch-BRではプロトン輸送の効率が低下している。M中間体の遅い成分の量とプロトンの量は共に温度が高くなるほど減少していることから、プロトンはM中間体の遅い成分に伴って取り込まれていると考えられる。
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