1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60055026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石井 裕 大阪大学, 医, 助手 (20028509)
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Keywords | マウス受精卵 / 体外受精 / トリチウム / 初期胚培養 / 初期胚移植 / 偽妊娠マウス |
Research Abstract |
マウス卵の試験管内受精、初期胚の培養およびその卵管への移植技術を使い、マウス受精卵のトリチウム放射線に対する感受性を、胞胚形成率、仔マウス産出率を指標に検討した。 メスB6C3F1マウスを排卵誘発剤で処理し、採取した卵をICRオスマウスからの精子と6時間試験管内受精させた。第二極体放出によって確認した受精卵を集め培養を続け、受精開始7.5時間目より3時間HTO処理をした。この時期は受精卵の前核形成期にあたる。X線は受精開始8時間目に1回照射をした。処理卵はそのまま培養を続けるか、偽妊娠させたメスマウスの卵管に移植した。培養では、胞胚のハッチ数を調べ胞胚形成率とした。移植した卵は、出産前日にメスマウスを開腹し、生存胎児数、胎盤残遺数を調べ、それらの和より胎盤形成率を算出した。 1.胞胚形成への影響:HTO処理は受精開始7.5時間目から3時間であるが、この時期のX線感受性は大きくかわる。この3時間のX線感受性の平均は受精開始8時間目のX線感受性とよく一致したので、X線照射は受精開始後8時間目に行ってHTOの結果と比較した。胞胚形成率でみた前核形成期の受精卵の感受性は、HTOとX線でよく一致し、LD(50)は約120radとなった。 2.胎盤、胎児形成への影響:無処理の場合、移植受精卵の約50%が胎盤を形成し、約30%が生存胎児まで発生した。胎盤形成、胎児形成それぞれに対するHTOとX線の効果にはほとんど差がみとめられなかった。さらに、胎盤形成率でも胎児形成率でもLD(50)はおよそ40-50radで、胞胚形成率の約120radに比べかなり感受性が高かった。前核形成期での放射線損傷が、胞胚期以後、胎盤形成期までの発生段階でも影響をおよぼしているものと考えられるが、in vitroの卵操作によって放射線に対して弱くなる可能性もすてきれない。
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