1985 Fiscal Year Annual Research Report
山田寺を中心とする出土木材の保存法の改良と考古学的建築史学的研究
Project/Area Number |
60129011
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
坪井 清足 奈良国立文化財研究所, その他 (00000464)
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Keywords | 出土木材 / PEG / 真空凍結乾燥法 / 合成樹脂 / 広葉樹 / 針葉樹 |
Research Abstract |
1.PEG含浸法、真空凍結乾燥法、その他、合成樹脂による硬化方法で処理された木材の試験片を用い、保存環境の湿度を20%から100%にまで変化させた場合の、木材の吸湿能力と寸法の変化を測定した。いわゆる湿度変化に対する緩和能力の測定である。たとえば、関係湿度を30%から70%に変化させた場合の吸湿量(木材試験片に対する重量比)は、0.1%から3.5%の範囲で変化した。これは、保存処理の方法をえらぶことによって、木材の吸湿能力を自在に制御できることを意味する。 2.山田寺跡出土部材のうち、柱材をPEG含浸処理したが、構築部材として耐えるようにするためには、さらに、関係湿度変化に対する緩和能力のある物性が必要であると想定した。PEG含浸法と真空凍結乾燥法を併用する形で処理するのがひとつの有力な方法である。しかし、構築部材としての強度に不足するところもあり、これらは強化プラスチックス(FRP)とステンレス製支柱を添えることで補うことにした。今後の問題は、このような処理方法では見かけ上の不自然さが残ることであり、これを解決しなければならない。 3.山田寺跡出土の壁土は、自然乾燥させると激しいひび割れが発生し、壁体内部の木舞部分が崩壊する恐れがある。これらは、PEGによる硬化と、真空凍結乾燥したのちにイソシアネート系合成樹脂で硬化する方法で処理した。しかし、前者の方法で処理したものは色調も相応し、処理手順も比較的容易であったが、強度は十分でなかった。後者では、強度を十分に維持でき、復原建物に嵌めこんで展示公開するに耐え得る状態となった。 4.唐古遺跡出土の部材については、PEG含浸法と真空凍結乾燥法を使い分けて保存処理を実施した。発掘後、50余年を経過した木材であっても安全に保存処理することが可能であった。
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