1985 Fiscal Year Annual Research Report
カチオン輸送蛋白質のカチオン認識機構に関する遺伝子工学的解析
Project/Area Number |
60215011
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
土屋 友房 岡山大学, 薬, 助教授 (80012673)
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Keywords | カチオン / 【Na^+】 / 【H^+】 / 遺伝子 |
Research Abstract |
細胞膜におけるイオンの輸送は、エネルギー転換、恒常性の維持、情報伝達等において重要な意味を持っている。代表者らは微生物細胞におけるカチオンの輸送に注目し、カチオン輸送蛋白質の構造とカチオン認識機構について、遺伝子操作面からの解析をおこなった。主として大腸菌を用い、【Na^+】や【H^+】を輸送する蛋白質(【Na^+】/【H^+】逆輸送担体、メリビオース輸送担体、セリン輸送担体、プロリン輸送担体)について解析し、以下の諸点に関する新知見を得た。1)【Na^+】/【H^+】逆輸送担体におけるカチオン認識と構造遺伝子のクローニング。この逆輸送担体は【Na^+】の他に【Li^+】を輸送することができる。細胞内の【Li^+】は毒性を示すので、この逆輸送系による【Li^+】の排出は【Li^+】の解毒という意味をもつ。この【Li^+】の細胞毒性と逆輸送系による解毒作用とを指標にして、逆輸送系遺伝子のクローニングをおこなった。2)メリビオース輸送担体に関するカチオン共役変異株の解析。すでに得ていたカチオン共役変異株では、メリビオース輸送に対して【H^+】との共約能が失われ、【Li^+】との共約能を獲得していた。【Na^+】との共役能はもとのままであった。この変異株について、変異したメリビオース輸送担体遺伝子のクローニング、遺伝子内マッピング、変異がマップされた領域のDNA塩基配列の決定をおこなった。その結果、melB遺伝子の364番目のシトシンがチミンに置換していることがわかった。このことから、メリビオース輸送担体のアミノ末端から122番目のプロリン残基がセリン残基に置換していることがわかった。プロリン残基からセリン残基への置換により、輸送担体のペプチド主鎖の角度が変わることが考えられる。このような変化により【H^+】認識部位の構造が変わり、【Li^+】を結合できるようになったものと考えられる。3)セリン輸送系とプロリン輸送系について、カチオン共約様式を明らかにした。
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Research Products
(2 results)