1985 Fiscal Year Annual Research Report
大脳基底核と関連する中脳橋被蓋ニューロンの分布と特性
Project/Area Number |
60217003
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
岡 宏 福井医科大学, 医, 教授 (30025621)
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Keywords | 黒質・中脳橋被蓋投射 / 抑制性シナプス後電位 / 中脳橋被蓋核ニューロン / HRP細胞内染色 |
Research Abstract |
大脳基底核の出力部は、周知のように、主として淡蒼球と黒質によって形成されている。この両部位からは視床核、手綱核、上丘および中脳橋被蓋などに投射が送られている。特に視床をめぐり大脳皮質に回帰する神経連絡の機能構成については多くの所見が報告されている。しかし、大脳基底核が投射支配する脳部位として最も尾側にあり、下位運動ニューロンとの関連が予測される、中脳橋被蓋の神経連絡については報告が少ない。大脳基底核疾患の発生機序を考察する際に、視床を経由し大脳の運動性皮質に影響を与える機構のほかに、大脳基底核から中脳橋被蓋を経由し下位運動ニューロンに影響を与える機構を調べる必要がある。本研究はその基礎的なデータを提供することを目的とした。 実験動物として、軽いネンブタール麻酔下のネコを用いて、黒質網様部の電気刺激に応答する中脳橋被蓋ニューロンの正確な局在分布と形態的特徴を細胞内HRP染色法により解析した。黒質刺激により、抑制性シナプス後電位(IPSP)を生じる被蓋ニューロンは、脚橋被蓋核、楔状核、結合腕傍核および中心灰白質に存在した。脚橋被蓋核と結合腕傍核ニューロンに生じるIPSPの方が楔状核および中心灰白質ニューロンに生じるものより長いことが判明した。さらに、細胞内HRP注入によって染色された被蓋ニューロンは、いずれも形態学的には広汎な樹状突起の広がりを示すものであった。黒質に関連する中脳橋被蓋ニューロンの下行性投射は、大部分が腹側橋延髄網様体、すなわち網様体脊髄路の起始部に終止すると考えられている。したがって、大脳基底核の出力は黒質-中脳橋被蓋部-網様体-脊髄へと連絡されることが予測されるが、これらの投射系の機能的意味付けについては、さらに詳細な今後の研究の結果をまたなけばならないと思われる。
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