1985 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギーイオンビームの固体表面での散乱と電荷交換過程の研究
Project/Area Number |
60220001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
楠 勲 東北大学, 計測研, 助教授 (30025390)
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Keywords | イオンビーム / 固体表面 / ビームの散乱 / 電荷交換 |
Research Abstract |
低エネルギーイオンビームと固体表面との相互作用の研究は、表面反応や表面での新物質の作成に新しい知見をもたらすと期待されるが、詳しい研究は極めて少ない。例えば、イオンビームは表面から種々の方向に散乱されるが、どの程度がイオンのままで散乱されて、どの程度が電荷交換で中性化されるのか、また表面にどの程度付着または侵入して残るのか、正確なデーターは少ない。イオンの散乱分布から表面構造についても研究されているが、方法論としてまだ十分に確立していない。本研究は、表面での電子過程を研究するために、イオンビームの表面散乱と電荷交換過程について調べることを目的にしている。 本年度は表面研究用のイオンビーム装置を新たに製作し、稼動を始めた。イオンビームの作成に、分子線法の応用を試みている。気相での電荷交換反応では、【O^+】とHClの衝突で近共鳴現象が見られ、化学発光から電荷交換過程に関する興味ある結果が得られた。イオンビームの固体表面からの散乱については、東大物性研との協同研究で、Cu (100)表面からの【N(^+_2)】ビームの散乱を、100〜1000eVの範囲で研究した。散乱分布をマルチチャンネルプレートと2次元位置検出器で調べた結果、600eV以上では、〈110〉方向に対するビームの配向効果が現われ、表面チャンネリングと呼ばれる現象が観測された。このような現象を、このような低いエネルギー領域で観測したのは他に例がない。衝突エネルギーを下げると、この効果はだんだん消えて、鏡面散乱を中心としたぼやけた散乱になる。これは低エネルギーのイオンは表面第一層のみに作用することを意味する。イオンの生き残り確率のエネルギー依存性についても測定したが、200eV以上では、ハグストラムの式でほぼ表わされる。しかし、100eV以下では今後の検討を要する。
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