1985 Fiscal Year Annual Research Report
日本人におけるミエロペルオキシダーゼの遺伝的欠損と易感染性の関連
Project/Area Number |
60227020
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石村 巽 慶応義塾大学, 医, 教授 (40025599)
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Keywords | ミエロペルオキシダーゼ / 感染防御 / 好中球 / 遺伝的酵素欠損 / 4次微分スペクトル法 |
Research Abstract |
ミエロペルオキシダーゼの欠損症は海外、特にアメリカにおいてはその発生頻度ならびに遺伝的形式、合併症などが解析されているにかかわらず、本邦ではこれまで系統的な研究が行われたことを聞かない。本研究はミエロペルオキシダーゼの感染症病状を修飾する遺伝的基礎因子としての可能性に注目し、(1)先ずその血液中含量の簡便な測定法を開発し、(2)その方法を用いて日本人における正常ならびに異常値(増多、減少)を定め、(3)さらに欠損症のスクリーニングを試み、その日本人における頻度、遺伝形式などを明らかにすると共に、(4)易感染性その他の疾病との関連性を追求し、(5)これらの知見を総合してミエロペルオキシダーゼの生理作用とその生体における意義を明確にすることを目的とする。60年度はこの中、主として(1)、(2)について実験を行い、下記の結果を得た。 (1) ミエロペルオキシダーゼが極めて特異な吸収スペクトルを持つヘムタンパク質であることを利用し、これに我々が開発した低温4次微分スペクトル法を併用して全血中の本酵素を迅速かつ正確に定量する手法を確立した。(2)この方法を用いて約50名の健康人ボランティアの末梢血中ミエロペルオキシダーゼ含量を測定したところ1mlあたり 115±54pmolであった。しかしかなり個人差が大きく50pmol/ml以下の場合や300pmol/ml以上の人もあり健常者間で10倍近くの差が認められた。また好中球数と全血酵素濃度の関係は正の相関を示すのに対し、血球中酵素濃度と全血中酵素濃度は相関せず、上記の差は血球数の増減によることが判明した。今後はより秀れたスクリーニング法を確立し、欠損症を見出すとともに、ミエロペルオキシダーゼレベルと感染防御力の関係を明らかにしたい。
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