1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60301001
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今井 知正 千葉大, 文学部, 助教授 (50110284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 俊 千葉大学, 文学部, 助教授 (50155404)
長岡 亮介 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (60155918)
野家 啓一 東北大学, 文学部, 助教授 (40103220)
大庭 健 専修大学, 文学部, 助教授 (00129917)
藤田 晋吾 秋田大学, 教育学部, 助教授 (20019318)
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Keywords | 科学哲学 / 科学史 / 実在論 / 反実在論 / 意味理論 / 認知科学 / 日常言語 / 民間心理学 |
Research Abstract |
昭和61年度におけるわれわれの研究は方法的にいって以下の二つに大別される。一つは、われわれ研究者内部での議論によるものであり、もう一つは、外部の研究者を招いてわれわれとの間でなされた議論によるものである。1.前者に属する主なものは、前研究代表者であった中村秀吉の論文『翻訳の不確定性と言語理解の実践的性格』(千葉大学大学部「人文研究」第15号、昭和61年3月)を廻ってであった。この論文は現代の科学哲学や哲学一般に相対主義の潮流をもたらす機縁ともなったクワインの翻訳の不確定性・指示の探索不可能性・存在論の相対性の諸テービを日常言語およびその理解の実践的性格という、基本的には後期ヴィトゲンシュタインの観点に立って検討批判したものである。われわれの議論はクワインの言う「翻訳」とは何か、意味の否定を伴って語られる翻訳概念の行方は何処かという点に集中した。そしてこれより明らかになった最も重要な成果の一つは、クワインの後に登場したディヴィドソンが日常言語の意味理論を構成するにあたり、真理概念にその礎を置いたという事実が重大にして、かつ容易に理解可能なものに見えてきたことであった。2.後者に属する研究は、外部の研究者として柴田正良、山田友幸、服部裕幸の各氏を招いて行ったものである。その研究テーマは、ウィギンスの概念論的実在論の妥当性と反実在論との関係、認知心理学や認知科学の興隆に伴い、これらと対比される「民間心理学」、つまり人間のこころと行動に関する日常的な理解様式の問題、さらに異文化理解と相対主義との連関、理解と概念組識・パラダイムの変容との関係などであったが、これら共同の研究と議論を通してわれわれの得た結論は、意味と理解と説明の三概念が適用される研究領域が多様であること、よって歴史的な、狭い意味での存在論の枠を越えた実在論と反実在論との関係の追求が今後の論議の対象となることという点であった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 今井知正: 千葉大学文学部「人文研究」. 第16号. 7-23 (1987)
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[Publications] 大庭健: 思想. 747号. 36-63 (1986)
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[Publications] 野家啓一: 東北哲学会年報. 第2号. 27-32 (1986)
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[Publications] 野家啓一: 現代思想. 14-11. 156-170 (1986)
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[Publications] 長岡亮介: 数学セミナー. 7295 296 29. 0 70-7564-70 76-8 (1986)
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[Publications] 大庭健 共著,加藤尚武編: "ヘーゲル読本" 法政大学出版局, 378 (1987)
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[Publications] 土屋俊: "心の科学は可能か" 東京大学出版会, 185 (1986)