1985 Fiscal Year Annual Research Report
現代イスラーム社会の変容の綜合的研究-思想的背景と現状
Project/Area Number |
60400012
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
黒田 寿郎 国際大学, 国際, 教授 (90051309)
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Keywords | 現代イスラーム社会 / 社会変容 / 存在論的世界観 / イスラーム復興運動 / 無利子銀行 |
Research Abstract |
昭和60年度は、初年度として、(1)原典を中心とした文献の蒐集及び調査、(2)主要文献の選択、翻訳開始、(3)分析的研究の準備、を行なった。設備費の全体を占める図書については、アラビア語並びにペルシャ語の原典資料を中心に、わが国にはこれまでなかった文献を相当数購入することができた。それらを調査した結果、本プロジェクトの次の4つの柱について、それぞれ重要文献の選択が行なわれた-〔1〕現代イスラームの社会・経済・政治思想と社会変容の研究、〔2〕現代イランにおける12イマーム・シーア派思想の研究、〔3〕イスラーム経済・金融の研究、〔4〕イスラームの政治理念と現状の研究。これらの文献のうち、本年度に翻訳を予定したものについては、その作業が終了した。特に、現代イランについては、イラン・イスラーム革命においてきわめて重要な役割を果たしながらも紹介されることがなかったM.H.ベヘシュティーの著作、また、イスラーム金融に関する最も重要な理論書であるM.バーキルッ=サドルの著作の訳業が終了した。 こうした作業と並行した研究会においては、第2年度以降の分析的研究に備えて、基本視座をめぐる検討が行なわれてきたが、これまでのわが国の研究に欠落していた部分として、次のような新たな認識が獲得された-(イ)社会変容を個別的な事件から把えるのではなく、イスラーム文明の連続性の中で分析する手法の必要性、(ロ)認識論を主体とする近代西洋とは異なって、独自の存在論を前提とするイスラーム社会の構造、(ハ)政治思想の面で、19世紀末以来の「イスラーム復興運動」を1960年代までで4期に区別し、現在を第5期と把える分析。このような基本視座の設定は綜合的研究にとって肝要であり、次年度以降も、分科会と並行して認識を深めたい。また、今年度購入した貴重な資料を活用して、研究を進める予定である。
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Research Products
(1 results)