1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60410011
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
服部 文男 東北大学, 経, 教授 (20004179)
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Keywords | マルクス / 商品 / 貨幣 / スタグフレーション / 市場 / 労働に応じた分配 / 事前 / 事後 / 価値尺度 / 価値形態論 / 流通手段 / 金 / 管理通貨制度 / 紙幣 |
Research Abstract |
(1)本研究では、マルクスの商品論を主として現存社会主義の現実と、また貨幣論を現代資本主義の現実と、対比して、再検討を進めている。 (2)マルクスの社会主義経済構想の要点は、労働に応じた分配が行われる非商品制共同経済ということにあった。しかし労働に応じた分配は現存社会主義では実現されていない。それは各企業の労働生産性や製品実現条件などを均等化することができると想定したこと、消費の構成と量を事前に予測できると想定したことなどの欠点のためである。これはマルクスの価値規定の吟味を不可欠にさせる事情であり、またマルクス理論に事前的な期待の要素が希薄であって経済政策-資本主義的な-との結びつきを困難にするという論点とも結びつく。 (3)マルクスは商品交換の中から交換矛盾をつうじて析出されてくる金商品が貨幣であり価値尺度であると規定し、それが今日でもマルクス経済学者か否かを験べるリトマス試験紙的な役割をもたされている。しかしマルクスの価値尺度商品を導出する論理丐「価値形態論」)は哲学的なものであって現実の過程を反映したものではない。その結果価格標準設定に果す国家の役割が単なる付随的なものどしてしか捉えられず、管理通貨制度の評価を誤らせることにつながった。 (4)金は既に価値尺度ではありえず、資本主義は管理通貨制度の下で貨幣、信用面での新たな矛盾を展開している。金=価値尺度というドグマから解放されて新たに理論展開をはかる必要がある。 (5)以上の(1)〜(4)の論点について本研究グループ内部でも必ずしも意見の一致をみているわけではない。来年度に更に議論を深めて、マルクス理論の再検討・批判にとどめず、新たな理論展開をはかるべく努力したい。
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