1985 Fiscal Year Annual Research Report
高磁界下における第二種超伝導体の臨界電流密度の飽和現象
Project/Area Number |
60420019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松下 照男 九州大学, 工, 助教授 (90038084)
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Keywords | 超伝導体 / 量子化磁束格子 / ピン止め / 臨界電流密度 / 飽和現象 / Kramer則 |
Research Abstract |
転位がピン止め中心として作用するNb-Ta合金の臨界電流密度は上部臨界磁界【B_(c2)】近傍において転位の濃度に依存せず、いわゆる飽和現象を示す。微小交流磁界重畳法により高磁界下での量子化磁束格子の弾性・塑性特性を調べたところ、磁束格子の固さを表わす弾性定数は転位の濃度に対応して変化しており、またその磁界依存性はKramerモデルで仮定されている剪断定数の依存性【C_(66)】α【(1-b)^2】とは異なって、むしろピンの強さの依存性fpα(1-b)に近いことが明らかになった。ここでb=B/【B_(c2)】は規格化磁界である。この結果はKramerモデルで仮定されているように量子化磁束格子の剪断フローが生じているのではなく、量子化磁束がピン止め中心からはずれて全体的なフローを起こすという通常の機構が生じていることを示している。事実、b=0.85において量子化磁束格子の弾性定数の値は剪断のみで得られる値の約7倍となっており、剪断力よりもピン力の方が主であることが明らかとなった。一方量子化磁束格子の降伏点に対応する相互作用距離は、飽和領域では磁界の増加と共に急激に減少しており、これより量子化磁束格子が急激に脆くなることが明らかになった。飽和現象はなだれ現象のような一種の協力現象であると考えられる。量子化磁束格子の欠陥の周囲の局所的な塑性変形が引き金となって全体的な磁束フローが生じると仮定することによって臨界電流密度の飽和およびKramer則として知られるその磁界依存性が説明できる。またこの考えによればピンがさらに強くなると、量子化磁束格子が流体状となって弾性相互作用が弱まること、およびピンによる相互作用の遮蔽効果が大きくなることのために相関距離が短かくなり、飽和現象が起こらなくなって脱飽和となることが説明できる。事実、ピンが強い常伝導析出物(【Nb_2】N)のときは脱飽和特性となることが確認された。
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Research Products
(1 results)