1985 Fiscal Year Annual Research Report
溶接部の透過X線写真にあらわれる影と溶接部の機械的性質
Project/Area Number |
60420048
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 統市 名古屋工業大学, 工, 教授 (60024155)
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Keywords | ステンレス鋼 / 溶接 / 溶接欠陥 / 溶接部の健全性 / 非破壊検査 / X線ラジオグラフィ / 透過X線写真の影 / 溶接部の機械的性質 |
Research Abstract |
金属材料の溶接部の透過X線写真には影と呼ばれるまだら模様があらわれる。我々はオーステナイト系ステンレス鋼や軟鋼溶接部にあらわれる影について研究を続けてきた結果、影の明瞭さは溶接部の健全性と関係がある、すなわち影の明瞭な溶接部は不明瞭なものに比べて機械的性質が劣るという知見を得ている。本研究では影の明瞭さと溶接部の機械的性質の関係をより厳密に、より広範な材料について調べ、これによって透過X線写真にあらわれる影から溶接部の健全性を評価するという、全く新しい非破壊検査法を確立するのが目的である。 昭和60年度は種々の組織のオーステナイト系ステンレス鋼サブマージドアーク溶接部を用い、影の明瞭さ、組織、結晶の内部歪および種々の機械的性質について調べ、現在までに行なってきたTIG溶接部の場合と比較した。得られた結果は以下の通りである。 1.サブマージドアーク溶接部の透過X線写真にあらわれる影は組織中にδフェライトが多く含まれるものほど不明瞭である。この傾向はTIG溶接部の場合と同じである。 2.サブマージドアーク溶接部の内部歪はTIG溶接部の場合と同様に組織中にδフェライトが多く含まれるものほど大きくなるが、同じ組織であればTIG溶接部よりもサブマージドアーク溶接部の方が内部歪は大きい傾向にある。 3.δフェライトを多く含む溶接部は含まないものに比べて強度が大きく、また曲げ延性も大きい。 以上のことから、オーステナイト系ステンレス鋼サブマージドアーク溶接部ではδフェライトを多く含んだ組織の溶接部は含まないものに比べて影は不明瞭であり、内部歪は大きく、機械的性質は優れていることが明らかになった。すなわち、影の不明瞭な溶接部は明瞭なものに比べて、より健全な溶接部であると言える。
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