1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60430004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 光男 東北大学, 理, 教授 (20013469)
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Keywords | 回転異性体 / パラージメトオキシベンゼン / 超音速ジェット / レーザー分子分光法 |
Research Abstract |
従来、回転異性体の研究は赤外、ラマンの振動スペクトルやマイクロ波吸収等の回転スペクトルによってなされてきたが、すべて電子基底状態における異性体間のわずかなスペクトル差を検出し同定するもので、これらの方法の複雑な多原子分子への適用はすでに限界に達しており、新しい観点からのアプローチが切に望まれている。本研究は現状を打破し、回転異性体の新しい発展をうながすものとして、回転異性体の電子状態、イオン状態に注目し、これら状態間の差掫利用して異性体の同定を行なうとともに、励起電子状態、イオン状態における回転異性体の静的、動的挙動を解明することを目的とする。 我々は超音速ジェットの極低温孤立分子条件下で種々のレーザー分子分光法を駆使して多くの置換ベンゼンの回転異性体の検出に成功した。本年度はとくにパラージメトオキシベンゼンにおけるシス、トランス回転異性体の構造、反応性について集中的に研究を行った。この分子の【S_o】→【S_i】吸收スペクトルを蛍光励起分光法、多光子イオン化分光法を用いて測定し、1光子吸收スペクトルと2光子吸收スペクトルの比較からシス、トランス異性体の電子状態をはじめて同定した。さらに二波長分光法により、これら異性体のイオン化ポテンジャルの精密測定を行った。その結果、S状態、イオン状態においてこれら異性体は200【Cm^-1】のエネルギー差を有することが明らかとなり、異性体の同定、分離に電子スペクトルが極めて有効であることを立證した。さらに超音速ジェット条件でこれら異性体と種々の溶媒分子間の錯体形成を研究した結果、シス、トランス異性体は無極性溶媒分子と錯体をつくるが、有極性溶媒分子はトランス異性体とのみ錯体を形成することを見いだした。 このような回転異性体の選択的錯体形成は、回転異性体の選択的化学反応に通じるものであり、その成果は内、外から大いに注目されている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Chem.Phys.Letter. 116-1. (1985)
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[Publications] J.Phys.Chem.89-17. (1985)
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[Publications] Chem.Phys.Letter. (1986)