1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60430005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田隅 三生 東京大学, 理, 教授 (60011540)
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Keywords | 回転異性化現象 / 近赤外光 / 赤外光 / マトリックス単離 / フーリエ変換赤外分光 |
Research Abstract |
本研究にはフーリエ変換赤外分光光度計のもつ高感度測定および高速測定機能を十分に利用することが不可欠である。そのために必要な性能を有する機種を第1年度に購入し、これと現有のマトリックス単離用クライオスタットとを組み合わせる光学系等を製作し、測定条件を整備することが当初の計画であった。しかし、研究経費の大幅削減により、フーリエ変換赤外分光光度計を当初計画通りに購入することができなくなったため、その一部をメーカーから借用し、かつクライオスタットとの結合光学系は別途の費用によって製作した。このような状況で測定をはじめ、現在装置関係は極めて好調に作動しており、以前の分散型赤外分光光度計で測定していた頃とは比較にならないぐらい良いスペクトルが短時間で得られるようになった。これはフーリエ変換型の高速走査・積算機能と検出器として高感度MCTを用いていることによるものである。また、内蔵コンピューターにより差スペクトルを容易に求めることができることも、本研究の目的には極めて有用である。 低温アルゴンマトリックス中での近赤外または赤外光による回転異性化現象について、従来行なってきた以上の定量的議論が可能となるような実験を進めている。現在とくに取りあげている分子はエチレンジアミンであるが、この分子については、予測に反して近赤外光は回転異性化を誘起する効率が低いことが見出された。その原因は近赤外領域にある吸収帯の強度がいずれも極めて小さいことによるものと考えられる。マトリックス単離した状態での近赤外吸収スペクトルの測定は、これまでほとんど行なわれておらず、この点の検討が必要となってきた。エチレンジアミン以外の分子、とくに以前に研究した2-クロロエタノールについても、近赤外光が本当に回転異性化に有効かどうかの再検討を急いでいる。
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