1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60430005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田隅 三生 東大, 理学部, 教授 (60011540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 宗隆 東京大学, 理学部, 助手 (40143367)
浜口 宏夫 東京大学, 理学部, 助教授 (00092297)
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Keywords | 回転異性化現象 / 近赤外光 / 赤外光 / マトリックス単離 / フーリエ変換赤外分光 |
Research Abstract |
研究の対象として、エチレンジアミンと1,2-プロパンジオールをとりあげ、低温アルゴンマトリックス中に単離されたこれらの分子の赤外光誘起反応を詳しく調べた。とくにエチレンジアミンについては、通常の分子種のほかに2種類の重水素化物(2個のメチレン基を全部重水素化したものと2個のアミノ基を全部重水素化したもの)について同様の測定を行い、マトリックス単離した状態で出現する回転異性体が【G^+】【G^+】【G^-】,T【G^+】【G^-】,【G^+】T【G^-】の3形(N-C,C-C,C-N結合のまわりの内部回転状態をゴーシュG,トランスTで表わしている)であることを明らかにした。【G^+】【G^+】【G^-】とT【G^+】【G^-】はともに分子内水素結合を有し、気体でも最も安定な分子形であるが、低温マトリックス中での赤外光照射により、これらの2形は【G^+】T【G^-】に変化すると結論された。基準振動計算により、これら3種の回転異性体の赤外吸収スペクトルの帰属を行った(重水素化物をも含めて)。 回転異性化反応を誘起するのは近赤外光か赤外光であるが、どの波数の光が有効であるかは興味ある研究課題である。そこで、赤外光源,OCLI社の円板上波数限定フィルター、球面鏡2枚を組みあわせた赤外光照射装置を製作した。これによって、4000-1000【cm^(-1)】の赤外領域で幅20【cm^(-1)】程度に限定された波数領域の光をマトリックス試料に照射することができるようになった。エチレンジアミンのNH伸縮とCH伸縮の個々の吸収帯によって吸収される赤外光の効果を定量的に測定することができた。その結果は現在なお解析中であるが、これらの振動バンドによって吸収されたエネルギーが回転異性化反応に使われてゆく過程に関して重要な知見を与えるものと考えられる。1,2-プロパンジオールについても顕著な赤外光誘起回転異性化反応と暗所における逆反応の存在が見出され、現在解析中である。
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