1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60430017
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
牧 巌 名古屋工業大学, 工, 助教授 (10024233)
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Keywords | ポルトランドクリンカー / 珪酸カルシウム / 【C_3】S / エーライト / C-S-H / 結晶成長 / 微細組織 |
Research Abstract |
1.ポルトランドクリンカー中の最主要水硬性鉱物である珪酸三カルシウム固溶体(エーライト)の複雑・多様なキャラクターの成因を、結晶成長の安定性の見地から以下のように相互に関連づけて簡潔に整理できた。成長速度の増加とともに、(1)結晶の形態上の不安定性(セル〜骸晶〜樹枝状)が増大する、(2)欠陥(転位、液相をはじめとする固体、液体包有物)濃度が高くなる、(3)構成相は【M_1】が支配的となる、(4)Al,Feなどの外来不純物元素濃度が増す。成長速度の低下は上記と逆の傾向をもたらし、構成相は【M_3】が支配的となる結果累帯構造が形成される。 2.エーライト微組織の変化が系の過飽和度の推移と関連づけて論じられた。系の非平衡度が大きい場合には核形成過程が優越するが、成長環境相のサイズから成長速度はむしろ低下し、欠陥、不純物の少ない小結晶が多数生成する傾向がある。 3.クリンカー製造時のプロセス変数(原料、焼成に関する)が、結晶成長環境を決める外部パラメータとして位置づけされ、それらがエーライトの微組織に与える影響が詳細に研究された。なかでも液相生成前の熱処理が、生成後における遊離石灰の液相への溶解機構の変化に関連してその後の結晶成長に支配的影響を及ぼすことが判明した。 4.エーライトの微組織と結晶成長環境、さらにはプロセス変数との関係が明らかになった結果、微組織の詳細なシミュレーションにより工場クリンカーのプロセス条件を推定し、ブラックボックスとされていたセメントキルン内の状態を解析できる見通しが生じて来た。 5.熱水条件下で生成した非晶質様含水珪酸カルシウムC-S-Hについてトバモライト様格子像を示す結晶化領域の存在をはじめて確認した。 6.NaClまたはNaOHを共存させることにより、水溶液成長では報告されていなかった0.6〜1.1の低C/S比のC-S-Hをはじめて合成した。
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Research Products
(1 results)