Research Abstract |
類似したアミノ酸配列を有しながら性質の異なる2種の酵素間で, 対応するペプチド領域を交換して生じるハイブリド酵素は, アミノ酸置換と酵素機能の相関を研究する上で重要である. 酵素の比活性,基質特異性,耐熱性等に決定的な影響を与えるアミノ酸残基が確定できれば, 部位特異的変異の目標とする事ができ, 情報量は拡大される. 又, 両親酵素の長所を併せ持った新酵素の出現も期待できる. ナイロンオリゴマー分解酵素EIIと, その進化起源酵素EII′はともに392アミノ酸残基より構成され, この中で47残基が相違している. EII′はEIIの1/100の酵素活性を有し, 免疫的に交叉反応を示す. 両遺伝子間で共通に保存されている制限酵素サイトを用いて組み換え, ハイブリドを作成した. その解析の結果 N末端から181番目の gly(EII′)からasp(EII)への置換が酵素活性の増大に必須であると結論した. そこで本年度は, このアミノ酸を他のアミノ酸(asn,glu,lys,his)に変化させ, 活性の変化を調べた. 変異酵素の作製には, 181番目のアミノ酸にのみミスマッチを持ち, 他は相補的な21merのオリゴヌクレオチドをホスホアミダイト法により化学合成した. EII′の162ー257番目のアミノ酸部分がM13ファージへ組み込まれたDNAに, 各々の合成オリゴヌクレオチドをアニールさせ, 修復合成後, この領域を親型のEII(又はEII′)へ戻した. Asn181,Glu181酵素(EIIのAsp181のみが, それぞれAsn,Gluに置換された酵素)の6ーアミノカプロン酸直鎖状2量体に対するKmは,それぞれ80mM,220mMでEIIの20mMに比較して増大していたが, Vmには,顕著な差が見られなかった. 又,Lys181,His181酵素は, 殆ど活性を示さなかった. 以上の結果より, 本酵素が, 同基質に高い親和性を示すには, 181番目のアミノ酸がAspであることが必要であると結論した.
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