1988 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜の情報受容と伝達機構の生理と病態:プロテインキナーゼCの研究
Project/Area Number |
60440033
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Research Institution | Kobe University School of Medicine |
Principal Investigator |
西塚 泰美 神戸大学, 医学部, 教授 (10025546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻田 浩司 神戸大学, 医学部, 助手 (60204103)
吉川 潮 神戸大学, 医学部, 講師 (40150354)
岸本 明 神戸大学, 医学部, 講師 (60127363)
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Keywords | ホルモン / 神経伝達物質 / 発癌プロモーター / カルシウム / イノシトールリン脂質 / 情報伝達 / プロテインキナーゼ / 受容体 |
Research Abstract |
私共は従来、プロテインキナーゼC(PKC)を中心とする情報伝達系が生体を構成する細胞に普遍的に存在し、ホルモンによる細胞機能の活性化や調節、神経シナプス機庁の解明に重要な機構であることを提唱している。過去3ヶ年の本研究では、PKCは複数の遺伝子に由来する酵素群であり、それぞれ異った活性化機構と触媒機能を持ち、多彩な細胞応答に対応しうる多様な酵素であることを見出した。本年度では、この観点からのPKCの生理意義とその病態分析の基盤を確立するべく、PKC分子種の組織、細胞内分布とその動態の特異性について以下の成果を得た。α種はすべての組織、細胞に広く存在し、線維芽細胞や腫瘍化細胞ではα種のみが発現されている場合が多い。一方、β種にはスプライシングの相違によるもの(βI、βII)が存在しているが、これらは組織や細胞によって、また細胞の分化レベルに応じて分布が異なる。殊にゴルジ小体膜にはβIIが特異的に存在している。γ種は中枢神経系で海馬や小脳に多く、特にシナプス部には特異的に存在する。また各分子種の動態にも特異性が見られる。細胞をTPAで刺激した際にはβ種が速やかにダウンレギュレーションを受け消失するのに対して、α種は長く活性を保持する。このように各分子種は明確な局在と動態の特異性を示している。従来の分子種とは構造の異なるδ、ε、ζの3種のcDNAの単離同定にも成功した。これらの発現産物はCa^<2+>やジグリセリドによる活性化が明瞭でなく、イノシトールリン脂質の代謝回転以外の伝達機構に共役している可能性が生じておりPKCの意義に新しい展開を与えている。以上最終年度のとりまとめにあたって、病態分析については充分の成果が得られたとは言い難い。しかし、PKCを介する情報伝達機構の酵素化学的基盤とその生理に関して所期の目的を達成し、今後の病態分析への道を開くことができた。
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[Publications] Kishimoto,A.: J.Biol.Chem.264. (1989)
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[Publications] Saito,N.: Proc.Natl.Acad.Sci.86. (1989)
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[Publications] Ono,Y.: Proc.Natl.Acad.Sci.86. (1989)
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[Publications] Nisgizuka,Y.: Nature. 334. 661-665 (1988)
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[Publications] Ono,Y.: J.Biol.Chem.263. 6927-6932 (1988)
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[Publications] Ase,K.: FEBS Lett.236. 396-400 (1988)
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[Publications] Kikkawa,U.: "Cold Spring Harbor Symposia Quantitative Biology" Cold spring Harbor Laboratory, (1988)
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[Publications] Kikkawa,U.: "Annual Reviews of Biochemistry,volume 58" Annual Reviews, (1989)