1985 Fiscal Year Annual Research Report
クロムおよびニッケルの生体内特異的結合物質および金属発癌に関する衛生学的研究
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60440039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和田 攻 東京大学, 医, 教授 (60009933)
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Keywords | 金属結合物質 / クロム結合物質 / ニッケル結合物質 / 金属発癌 / ニッケル発癌 / 有機錫の抗癌作用 |
Research Abstract |
本年度は、上記課題につき基礎的検討を行なった。 1. 結合物質に関する研究 (1) クロム結合物質 イヌ肝より分子量1500の結合物質2分画を得た。この結合物質は体内に吸収されたクロムの毒性を低下させ、かつ体外排泄の担体であることを明らかにした。またウサギ肝よりも同様の分画を得、ラット脂肪細胞を用いてインスリン作用への効果を調べたところ、クロム濃度pmol/mlでインスリン作用の著しい増強を認め、耐糖因子であることも明らかにした。 (2) ニッケル結合物質 酢酸ニッケルをラット腹腔内に注射し、尿,血液,各臓器への時間的分画を調べたあと、血清,腎,および尿試料をゲル濾過してニッケルの分布パターンを調べた。血清ではアルブミンと結合していたが、腎ではより低分子の分画ピーク【I】,【II】がみられ、尿へはこのうち【II】の分画のみが出現した。この分画は無機ニッケルと異り、やはりニッケルの体外排泄結合物質と推定された。 2. 金属と発癌に関する研究 (1) ラット再生肝を用いた核、核小体への金属分布研究では、ニッケルとクロムは、明らかに他の必須元素と異る動態を示し、核,核小体内存在量が大で、かつ蛋白・核酸合成と同調した動きを示さなかった。 (2) 発癌実験に用いる培養細胞系に関しては、3T3細胞を入手し、継代培養のための血清その他の条件がほぼ確立できた。現在ニッケルの形質転換に及ぼす影響を検討中である。 (3) 有機錫の抗癌作用に関しては、肉腫・腹水悪性細胞をマウスに接種し生存期間に対する各種有機錫の効果をみたところ、ジブチル錫は、有意の延命効果を示すことが明らかとなった。現在、より詳しい実験を施行中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Biochem.Biophys.Aeta.390-5. (1985)
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[Publications] Induatr.Health. 23-12. (1985)
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[Publications] 化学と生物. 23-8. (1985)
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[Publications] トキシコロジーフォーラム. 8-5. (1985)
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[Publications] 日本衛生学雑誌. 40-1. (1985)