1985 Fiscal Year Annual Research Report
本態性高血圧症における交感神経活動電位に関する研究
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60440048
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
金子 好宏 横浜市立大学, 医, 教授 (00045907)
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Keywords | 本態性高血圧症 / 交感神経活動電位 / 圧受容体反射 / 微少神経電図法 / 血圧調節 / 血漿ノルエピネフリン濃度 / 血漿レニン活性 / 血管反応性 |
Research Abstract |
本態性高血圧症患者の交感神経活動電位については、世界的にもまだほとんど知見がない。われわれは、微少神経電図法により無麻酔の患者において、交感神経活性の重要な指標である交感神経活動電位の記録に成功し、後逑するような新知見を得た。交感神経治動は、脛骨神経より導出し、血圧および心拍数とともに連続的に記録した。この筋交感神経活動電位(MSA)は、心拍に同期し、血圧の変動に伴って反射性に変化する複合神経発射活動であること、節遮断剤のトリメタファンの投与により抑制されることにより確認した。主な成果は以下の通りである。(1)安静時のMSA(バースト数/分)は、本態性高血圧患者では正常血圧者より有意に(p<0.05)大であった。またMSAと平均血圧値との間にはr=0.69(p<0.001)の正の相関がみられた(n=46)。この所見は、本態性高血圧症患者では安静時の交感神経活動が亢進していることを示唆する。(2)安静時のMSAと、同時に肘静脈より採血した血漿ノルエピネフリンとの間に、r=0.56,p<0.01,またMSAと血漿レニン活性との間にr=0.64,p<0.001の有意の正の相関がみられた。この所見は、安静時の血漿ノルエピネフリン濃度および血漿レニン活性が交感神経活動をある程度反映することを示唆する。(3)フェニールエフリン静脈内注入による血圧上昇時、高血圧患者では年令の等しい正常血圧者に比し、昇圧反応は有意に大であるが、昇圧反応に伴うMSAの抑制は有意に小であった。またニトログリセリン注入による血圧下降時、高血圧患者では、降圧反応が有意に大であるが、MSAの反射性の増加は有意に小であった。これらの所見は、本態性高血圧症患者では、圧受容体反射を介する交感神経系の調節機能が減弱していることを示し、この機序が高血圧の一つの維持因子となり得ることを示唆するものである。この成績は、1985年9月米国クリーブランド市で開かれた第39回米国高血圧学会で発表し、高い評価をうけた。
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