1986 Fiscal Year Annual Research Report
エナメル質形成に関するコンピュータシミュレーション
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60440082
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
脇田 稔 北海道大学, 歯学部, 教授 (40018916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野木 正章 北海道大学, 歯学部, 講師 (70002300)
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Keywords | エナメル質 / コンピュータシミュレーション / エナメル質発生 / エナメル芽細胞 |
Research Abstract |
まず、前年度までに主として透過電子顕微鏡によるイヌの歯胚の観察結果より、イヌのエナメル芽細胞のトームスの突起の形態に関して考察を行なった。イヌのトームスの突起は、立体的には「切り取られた円柱項部の角」と表現できる、極めて特徴ある特有の形態を有していることがわかった。すなわち、トームスの突起は平面のと曲面の二つの半円形が平面(S面)の曲線縁と曲面の(N面)直線縁とが接して稜線を形成して立上った立体形である。透過電子顕微鏡による観察から、エナメル質のハイドロキシアパタイト結晶は、このトームスの突起の表面に垂直に配列することが知られている。しかし、S面とN面上に同時に結晶が析出すると考えると、エナメル芽細胞はエナメル質形成に伴って、N面に平行に外側移動する事実に矛盾する。これらを考察した結果、次のような結論を得た。すなわち、(1)トームスの突起の表面に新たに析出するハイドロキシアパタイト結晶は、トームスの突起のS面とトームスの突起の間の細胞自由表面の上にのみ析出配列する。(2)結晶はこれらの面の上に概ね垂直に配列する。(3)N面上の結晶は、その基部で垂直に析出した結晶がエナメル芽細胞の外側移動に伴ってN面上をすべっている。 以上のトームスの突起の形態とその表面に配列する結晶の関係は、すべて数学的に表現できるので、トームスの突起の立体形態を「切り取られた円柱頂部の角」とし、そのS面と突起の間の細胞自由表面の上にある長さの結晶が垂直に配列するというモデルをコンピュータを用いて作製し、これらの条件の下に配列したエナメル質の結晶配列が、実際のエナメル質中の結晶配列に合致するかどうか客観的に判定するためのシミュレーションプログラムを作り、検討した。その結果、エナメル質内の結晶配列は、あるいくつかの断面においては、上記の条件に完全に一致した。なお検討を続行中である。
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Research Products
(2 results)