1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60440085
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐々木 哲 東京医科歯科大学, 歯, 教授 (80013803)
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Keywords | 象牙質 / ホスホホリン / リンたんぱく質 / セリンリン酸 / β-脱離反応 |
Research Abstract |
象牙質の非コラーゲン性成分は、コラーゲン量の約1/10にすぎないが、それらの生理的役割は最近特に重視されており、カルシウムイオンやアパタイト結晶に対する親和性が高く、コラーゲンと結合する能力があるものは、石灰化との関連も示唆されている。象牙質にはホスホホリンとよばれる特有のリンたんぱく質のほか、各種の糖たんぱく質、シアル酸含有たんぱく質、γ-カルボキシグルタミン酸含有たんぱく質、プロテオグソカンなどが存在する。そこで、これらの分離精製、化学構造の解析に関する研究を行ない、それらの成果から広く非コラーゲン性たんぱく質の硬組織形成に於ける生理的機能を解明することを目的とした。 実験材料としては、ウシ前歯歯胚および萠出歯の象牙質のみを採取した。これを粉砕し、EDTA脱灰-Ca沈殿法によりホスホホリンを分離し、クロマトグラフィー等により精製した。このたんぱく質についてしらべた結果、以下のような成果が得られた。 1)ウシ象牙質より抽出したホスホホリンの分子量に多様性が認められ、またジニトロフェニールヒドラジン縮合法と4-水素化ホウ素ナトリウム還元法でしらべたところ、この分子中にピルビン酸が含まれることが確かめられた。このピルビン酸は、ホスホホリンの調製の段階で人工的に生成されたものではなく、in vivoで形成されたものであることが、推定された。 2)また、歯の成熟にともなって、ピルビン酸含有量も増加の傾向が認められた。 以上の結果を総合して、象牙質の非コラーゲン性たんぱく質の主成分であるホスホホリンは、生体内でセリンリン酸の非酵素的なβ-脱離反応によって、リン酸基がはずれたのち、ペプチド鎖の切断が起こり、いろいろの長さの分子が生じたものと推定された。
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Research Products
(1 results)