1985 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60440094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 博 北海道大学, 医, 教授 (20000911)
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Keywords | がん細胞 / 悪性度 / 腫瘍原性 / 転移能 / 突然変異 / DNAメチル化阻害 / 細胞融合 / ウイルス感染 |
Research Abstract |
(研究目的)がん細胞はもともと悪性のものであるが、その悪性度の巾は大きい。この悪性度の高低の本質が何であるかを主として細胞側の立場から解明する。とくに、がんの進展に伴い出現する"より悪性"の細胞出現の原因と機序を究明し、この原因因子を除去することによって、少なくとも悪性度の高いがん細胞の発生阻止を狙うものである。 (研究計画・方法)がん細胞の悪性度が細胞のgeneticな変化、あるいはepigeneticな変化にもとづくものか、あるいは細胞膜の一時的修飾によるものかを分けて考察する。悪性度を規制する因子として、突然変異原物質、DNAメチル化阻害、細胞融合、ウイルス感染、分化誘導、細胞間交渉などを選択し、それぞれの因子が細胞の悪性度にどのような影響をもつかを検討する。 (研究成績)がん細胞の悪性度の指標である腫瘍原性ないし転移浸潤能は次のような実験条件で変換できることが明らかになった。1.ラット線維肉腫KMT-17の培養クローン【A_3】は10%胎児牛血清(FCS)添加培地で培養したときに示す生体内腫瘍原性を、1%FCS培地で培養すると失う。2.培養マウス線維肉腫BMT-11細胞の約半数は突然変異原物質ケルセチンあるいはDNAメチル化阻害剤5-azacystidine処理後、腫瘍原性を失うが、逆にケルセチン処理後転移能を獲得した1クローンが出現した。これらの変換は一時的なものでありepigeneticなものである。3.ウイルス感染ラット癌細胞のほとんどのものが腫瘍原性を失う。この変換は恒常的なものである。4.マウス形質細胞腫S194細胞は正常線維芽細胞と融合すると腫瘍原性を失う。この融合雑種細胞では親S194細胞が示すc-mycの発現が抑制される。5.ラット乳癌の高転移株で強く発現しているc-fos遺伝子が低転移株では発現されていない。以上の所見のうち1.2.3.の変換の機序は新しく発現した抗原が原因となって起こる免疫学的拒絶である。
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[Publications] Jpn.J.Cancer Res.(Gann). 77-1. (1986)
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[Publications] Neoplasma. 32-4. (1985)
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[Publications] Jpn.J.Cancer Res.(Gann). 76-1. (1985)
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[Publications] Cancer Res.45-2. (1985)
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[Publications] Cancer Res.45-4. (1985)