1986 Fiscal Year Annual Research Report
末梢および中枢化学感受性システムによる階層性血液化学情報処理機構と摂食調節
Project/Area Number |
60440097
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大村 裕 九大, 医学部, 教授 (30019517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥門 信久 九州大学, 理学部, 助教授 (40037213)
酒井 浄 九州大学, 薬学部, 教授 (90153840)
坂田 利家 九州大学, 医学部, 助教授 (50037420)
片渕 俊彦 九州大学, 医学部, 助手 (80177401)
清水 宣明 九州大学, 医学部, 講師 (50019634)
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Keywords | 摂食抑制物質 / 絶食 / 内在性有機酸 / 視床下部外側野 / ブドウ糖感受性ニューロン / 交感神経活動 / 糖・脂肪代謝 |
Research Abstract |
摂食行動を調節する体液生因子として絶食ラットの血清から抽出した短鎖有機酸、3,4-dihydroxybutyric acid γ-lactone(2-DTA)が摂食抑制物質であることは行動学的および神経生理学的実験によってすでに同定したが、全身投与で効果がなく、リポゾーム包埋することによって効果が出現することから、脳-血管関門を通過しにくい物質と考えられた。そこで2-DTAの3番目の炭素からOH基を除きより脂溶性が強くなった2-buten-4-olide(2-B40)を合成しその効果を検討した。2-B40をラットに経口および腹腔内投与すると、飲水量および行動量は変化せず摂食量だけが有意に低下した。第【III】脳室内投与では末梢投与の1/100〜1/200で十分効果を示したことや、麻酔下ラットでLHAのブドウ糖感受性ニューロンの活動を特異的に抑制したことから、LHAは2-B40の作用部位の一つであると考えられる。一方、絶食ラットの血中有機酸の動態を再検討した結果、2-B40が内在性物質として血中に存在し2-DTAと同様の変動を示すことがわかった。すなわち2-DTAはラットの正常血中濃度が110μΜであり、絶食後36時間より増加して48時間目で最大値170μΜとなりその後徐々に減少した。2-B40は正常値が約3.5μΜであり、2-DTAと同じく36時間目から増加し48時間目で最大値13.5μΜとなり摂食によって正常値に復帰した。また、2-B40は少量の静脈内投与で膵臓、肝臓および副腎の交感神経の活動を著明に上昇させたことから、膵臓からのインスリン分泌の抑制、肝臓でのグリコーゲン分解および副腎髄質からのカテコラミン分泌の促進をおこし糖・脂肪代謝に影響を与えていると考えられる。以上の結果から2-B40は内在性有機酸として血中に存在し、おそらく2-DTAと互いに移行しながら、ともに視床下部の化学感受性ニューロンに作用して摂食行動および末梢自律神経を介した代謝系を調節していると考えられる。
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[Publications] Nobuaki Shimizu: Brain Research. 367. 128-140 (1986)
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[Publications] Junichi Nabekura: Science. 233. 226-228 (1986)
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[Publications] Carlos Ramon Plata-Salaman: Physiology and Behavior. 37. 735-739 (1986)
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[Publications] Yutaka Oomura: Brain Research Bulletin. 17. 551-562 (1986)
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[Publications] Carlos Ramon Plata-Salaman: Physiology and Behavior. 38. 359-373 (1986)
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[Publications] Yutaka Oomura: "Emotions:Neuronal and Humoral Control" Japan Scientific Societies Press/S.Karger,Tokyo/Basel, 15-25 (1986)
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[Publications] Yutaka Oomura: "Umami:A Basic Taste" Marcel Dekker,New York, 481-509 (1986)