1986 Fiscal Year Annual Research Report
超電導薄膜の新しい履歴を利用した記憶デバイスの研究
Project/Area Number |
60460065
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青峰 隆文 九大, 理学部, 教授 (50037206)
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Keywords | 超電導 / 薄膜 / 履歴 / 記憶デバイス / 臨界電流 / マイクロブリッジ |
Research Abstract |
垂直磁界を加えた超電導薄膜マイクロブリッジに電流を流すと、電気低抗が零である最大電流(臨界電流)は、ある一定値以上の磁界の増減に対して履歴を示す。すなわち、磁界の増加と共に、臨界電流は単調に減少するが、磁界の減少の時は、必ず、臨界電流は最大値を持つ。本研究はこの履歴を記憶素子に利用するための研究を行うものである。本年度は履歴を大きくする試料の形状、特にブリッジ長を決定すること、および記憶動作の高速性を測定することを当初の目的としたが、短いブリッジ長のマイクロブリッジの製作に手間取り、その動作特性の測定に至らなかった。ここで、ブリッジの形状を変えたり、アルゴンイオンを照射したりすることによって臨界電流対外部磁界曲線における履歴がどのように変化するかを調べた結果を報告する。 試料はガラス板上、又はサファイア基板上にニオブをスパッタで付け、その後、フォトリソグラフィとスパッタエッチングによって、くれびを有するマイクロブリッジを作製した。くびれ部分の長さのブリッジ長を長くすると、履歴は小さくなる。くびれの幅を広くすると、履歴は小さくなる。バンク幅を広くすると、臨界電流の磁界減少時の最大値に対応する磁界の値は大きくなる。くびれ部分がバンクの中央になく、バンクの片側に寄せた試料は履歴は小さくなり、磁界の1方向に対して、臨界電流は磁界減少時に最大値を示さなく、反対方向の磁界に対してのみ最大値を持つ。バンクがくびれ部分より厚い、いわゆる膜厚可変型ブリッジの履歴曲線は対称性が良く、又履歴も大きい。以上のようにマイクロブリッジにおいて臨界電流の磁界中の履歴を大きくするにはどのような形状にすれば良いかがわかった。 アルゴンイオンを試料に照射すると、履歴曲線の形は乱れ、履歴は小さくなったり、なくなったりする。この結果は履歴の原因の解明につながることが期待される。
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