1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60470007
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
平岡 賢三 山梨大, 工学部, 助教授 (80107218)
|
Keywords | イオンの電界脱離 / イオンの溶媒和 / クラスターイオン / 溶媒和エネルギー / イオンの蒸発 |
Research Abstract |
電界脱離現象をイオンを包む液体に適用した研究例はごく限られている。本研究は、イオン性液体からのイオンの電界脱離現象を詳細に検討することを目的とする。イオンの電界脱離過程においては、液相中の溶媒和されたイオンが気相に抽出される。したがって、脱離機構の解明には、イオンの溶媒和状態を厳密に評価する必要がある。本年度は、パルス電子線型高圧質量分析計を応用することによってイオンのクラスタリング反応を詳細に検討し、凝集相におけるイオンの溶媒和状態について以下のような種々の知見を得た。(1)プロトン化したブレンステッド塩基分子においては、プロトン親和力の大きな分子ほどプロトン化した分子の溶媒和エネルギーが小さくなることが分った。すなわち、プロトン親和力の大きな分子ほど、イオンとして気相に抽出され易くなる。(2)プロトン性溶媒および非プロトン性溶媒の負イオンに対する溶媒能は、気相クラスター分子の安定性と逆相関関係にあることが分った。これは、プロトン性溶媒分子の促進効果により、多くの分子が溶媒和に関与するからである。(3)プロトンの溶媒和においては(酸)、共有性結合が生じる。このため、プロトン化した分子は多くの溶媒分子を伴ったクラスターイオンとして気相に抽出される。したがって、加熱した対向流ガスを十分流すことによって、イオンの観測が可能となる。(4)ハロゲン化物イオンなどの負イオンの溶媒和においては、イオンと分子の相互作用が主に静電的なものとなる。非プロトン性溶媒では、溶媒和に強く関与する溶媒分子が第一溶媒和穀に限られるので、比較的容易に気相に抽出される。(5)多価イオンは強い静電的および共有性の結合で溶媒和されるので、気相に抽出する際の自由エネルギー変化(正)が一価イオンに比べて大きくなる。したがって、共存イオンが存在すると、気相への抽出が困難となる。
|
-
[Publications] Kenzo Hiraoka: Journal of Physical Chemistry. 90. 5910-5914 (1986)
-
[Publications] Kenzo Hiraoka: Journal of American Chemical Society. 108. 5683-5689 (1986)
-
[Publications] Kenzo Hiraoka: Bulletin of Chemical Society of Japan. 59. 2571-2575 (1986)
-
[Publications] Kenzo Hiraoka: Journal of Chemical Physics. 84. 2091-2096 (1986)
-
[Publications] 今井一洋: "超高感度高速液体クロマトグラフィー" 学会出版センター, 53 (1985)