1986 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ芳香族化合物における光反応と励起状態の多様性
Project/Area Number |
60470028
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
杉森 彰 上智大, 理工学部, 教授 (40053590)
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Keywords | ピリジン環のアルキル化 / 光トリフルオロメチル化 / 可視光を利用する光反応 / 放射線によるアルキル化 |
Research Abstract |
本年度はピリジン,ピリミジン誘導体を基質として、アルコール,【CF_3】Br,あるいはカルボン酸を反応剤とする可視光とガンマ線による反応を検討した。本研究の目的は、ヘテロ芳香族化合物の光反応の特性の解明とともに、可視(太陽)光やガンマ線の有機合成への応用を目指すところにある。 キノリンー脂肪族カルボン酸系は無色で、可視光による反応性は低い。しかし、遷移金属塩を共存させることにより、可視光を補促するとともに、励起状態でのカルボン酸ー金属イオンの電子移動によりピリジン環を効率よくアルキル化することに成功した。多面的に触媒を検討した結果、硫酸鉄【III】,硫酸セリウム【IV】が可視光によるアルキル化に有効であることを見出した。他の光酸化還元系で触媒作用が報告されている【Eu^(3+)】,【Cu^(2+)】,【Mn^(4+)】などの金属イオン,Ti【O_2】,cdsなどの半導体光触媒は本系ではうまく働かない。ガンマ線照射もカルボン酸によるキノリンのアルキル化に有効であった。 ピリジン環はアルコールとともに放射線照射することによって、アルキル置換を起こすことができた。脂肪族アルコールを用いるとよい効率でアルキル化が起こるが、【CF_3】【CH_2】OHによる【CF_3】【CH_2】基導入は低い効率でしか起こらなかった。 合成化学的に価値の高い【CF_3】のピリジン,ピリミジン環への導入を【CF_3】Brを用いる光化学的方法によって成功させた。特に、薬理作用の高い5-トリフルオロウラシルがウラシルから1段階で合成できたことは意味が大きいものと思われる(従来十数段階を要していた) 以上の結果は、反応機構の面では電子不足ヘテロ芳香環とラジカルの相互作用についての知見を与えるとともに、合成化学的には、従来利用されることの少なかったガンマ線や太陽光などの可視光の有機合成への取込みについて新分野を開拓するものである。
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[Publications] Akira SUGIMORI: Chem.Lett.1986. 409-411 (1986)
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[Publications] Akira SUGIMORI: Bull.Chem.Soc.Jpn.59. 3905-3909 (1986)
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[Publications] Akira SUGIMORI: Bull.Chem.Soc.Jpn.59. 3911-3915 (1986)
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[Publications] Takeo AKIYAMA: Bull.Chem.Soc.Jpn.