1986 Fiscal Year Annual Research Report
高圧NMR法による金属錯体の配位子置換反応に関する研究-活性化体積と反応機構-
Project/Area Number |
60470045
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Research Institution | Research Laboratory for Nuclear Reactors, Tokyo Institute of Technolgy |
Principal Investigator |
冨安 博 東京工大, 原子炉工学研究所, 助教授 (50016854)
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Keywords | 高圧反応 / NMR / 配位子交換 / 活性化体積 |
Research Abstract |
本年度は前年度作製した【^(17)O】、【^(13)C】-NMR専用高圧プローブを用いて、オキソバナジウム【IV】アクア錯体、VO【(H_20)(_5^(2+))】、の赤道面における【H_2】O交換反応速度の圧力依存性を調べた。実験はVO【(H_20)(_5^(2+))】を含む水溶液中でバルク水の【^(17)O】NMR測定を常圧から2000MPaまで行ない、その線幅からみかけの速度定数kobsを求めた。得られたlogkobsを圧力Pに対してプロットしたところ、良い直線性を示し、活性化体積【ΔV^≠】は0.3【cm^3】/molと決定することが出来た。この【ΔV^≠】の値を本研究(前年度)で得られた【VO^(2+)】と種々の有機配位子との間の交換反応における【ΔV^≠】の値と比較検討した。前年度の結果では【ΔV^≠】はVO【(dma)(_5^(2+))】 VO【(dma)(_5^(2+))】VO【(dmf)(^(2+)_5)】およびVO【(CH_3CN)(_5^(2+))】でそれぞれ-13.9、-9.9、-6.7、および-0.4【cm^3】/molであった。これら有機配位子では【ΔV^≠】の値は配位子の塩基性の強さと良い相関性があり、塩基性が強い(ドナー数が大きい)程【ΔV^≠】は負の大きな値を持つ。すなわち、配位子の塩基性が強い程交換反応は会合的であると結論された。本年度のVO【(H_20)(_5^(2+)】における【ΔV^≠】=0.3【cm^3】/molの値から、水交換反応が少なくとも会合的でないことは明らかである。しかし、この値は水のドナー数から予想される値(-0.4〜-6.7【cm^3】/mol)よりも僅かに大きい。この理由として、1)水のモル体積が有機溶媒に比較して小さく、反応に伴う体積変化が小さい。2)VO【(H_20)(_5^(2+))】では軸方向と赤道面の配位子の間で分子内交換が起り、大きな体積変化を伴なわない。が考えられる。Connick等はこの水交換反応に於いて【ΔS^≠】がほとんど0であると報告しているが、このことは2)の可能性を支持している。反応機構を詳細に調べるためには今後更に多くの【ΔV^≠】に関するデータが必要である。さらに将来は、ウランとトリウム錯体の配位子交換についても【ΔV^≠】を求める研究を進めて行く。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Woo-Sik Jung;Hiroshi Tomiyasu;Hiroshi FuKutomi: Inorg.Chem.25. 2582-2587 (1986)
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[Publications] Hiroshi Fukutomi;Hideki Ohno;Hiroshi Tomiyasu: Bull.Chem.Soc.Jpn.59. 2303-2308 (1986)
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[Publications] Hiroshi Fukutomi;Takaaki Matsuda;Masayuki Harada;Hiroshi Tomiyasu: Proc.Internat.Conf.Coord,Chem.,Athens,Greece.24. 602 (1986)
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[Publications] Jung-Sum Kim;Woo-Sik Jung;Hiroshi Tomiyasu;Hiroshi Fukutomi: Inorg.C im.Acta.109. (1987)