1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
60470084
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢野 重信 東大, 工学部, 講師 (60011186)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 貞雄 東京大学, 工学部, 名誉教授 (70010759)
|
Keywords | 配糖錯体 / EXAFS / 糖変換 |
Research Abstract |
1.溶存状態での糖質の配位化学的挙動ー酸素架橋を有するコバルト(【III】)エチレンジアミン錯体にアルドースを反応させると、Co原子一個当たり糖一分子、エチレンジアミン二分子が存在する赤色の反磁性錯体が得られる。これらの錯体の構造をAB,CD,NMRスペクトルの結果から推定した。D-マンノースとL-ラムノースは六員環【^3S-5】スキューボートコンホメーションをとり、またD-リボースは五員環【^2T-3】ツイストコンホメーションであることが判明した。これらの糖はC1位のNを起点としてC2位、C3位の3点で金属に配位しており、糖質の配位化学的挙動を推定するうえで重要な情報の一つとみなされる。又、糖とジアミンとの反応によるN-グリコシド結合の証明を、配位窒素原子上のHを部分的にD交換させることにより現われる【^(13)CNMR】シグナルの分裂パターンに基づいて行った。 2.非晶質配糖錯体のEXAFS法による構造化学的考察ーN,N,N′-トリメチルエチレンジアミンを配位子とするNi(11)錯体はメタノール溶液中に共存する一対のC2エピマーの一方のみを選択的に取り込むという極めて珍しい性質を示すが、この選択的錯形成の要因をEXAFS法により検討した。以前にX線結晶構造解析した配糖錯体を標準にして解析したところ、この選択性の要因は、1,2,3位の水酸基がcis,cis配置を持つ糖が、五員環構造をとりNi原子間を架橋配位する多核錯体の形成にあることが判明した。3.遷移金属ポリアミン錯体による単糖の変換反応機構の解明ー,N,N,N′-トリメチルエチレンジアミン及びN,N,N′N′-テトラメチルエチレンジアミンのNi(【II】)錯体は、穏和な条件下でアルドースのC2位をエピ化することを見いだしているが、金属イオン、ジアミンの種類を変えた実験及び【^(13)C】で標識した糖を用いた実験から、本エピ化反応は炭素原子の転移を伴う珍しいエピ化であることが判明した。
|