1986 Fiscal Year Annual Research Report
放電処理による表面活性化を利用する木材の新しい接着法の開発
Project/Area Number |
60470138
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂田 功 九大, 農学部, 教授 (10038169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 徹 島根大学, 農学部, 助手 (90093640)
森田 光博 九州大学, 農学部, 助手 (30038301)
樋口 光夫 九州大学, 農学部, 助教授 (80038257)
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Keywords | コロナ放電 / 放電プラズマ / 表面処理 / 木材接着 / セルロース / シッフ染色 |
Research Abstract |
本研究は放電処理によって木材表面を活性化させ、適当な空げき充てん剤を介して表面同志に化学結合を生成させ、通常の接着剤を用いないで木材接着を達成しようとするものである。本年度の研究においては、放電処理によって、木材構成成分にどのような化学変化が起るかについて検討すると共に、接着性向上の点で放電処理と比較あるいは併用するために、酸化剤処理によって表面活性化させた木材パーティクルから木質ボードを製造し、その接着力を試験した。木材構成成分であるセルロースおよびヘミセルロースに対するコロナ放電処理の影響については次の結果が得られた。 1)セルロース分子のモデルとして水溶性のヒドロキシエチルセルロースの乾燥試料を用いると、放電処理によって、水不溶部を部分的に生成する。この不溶化は水素結合などの二次結合によるものではなく、共有結合による架橋反応によることが明らかにされた。 2)一方、放電処理後も水可溶性を示す区分については、分子量が低下し、枝分れ構造に変化しており、放電によってセルロース分子に構造変化が起ることが明らかになった。 3)赤外吸収スペクトルの測定結果、放電により1380【cm^(-1)】に新たな吸収が生成し、1730【cm^(-1)】のカルボニル基の吸収がやや増加することが判った。 4)シップ染色によって、新たにアルデヒド基が生成することが認められたが、カルボキシル基までの酸化は殆んど進まないことが判った。また、木材パーティクルを用いて、放電処理と比較または併用するために行った酸化剤(過酸化水素など)による表面処理によって、接着性が向上することが判った。処理によって木材表面にラジカルや官能基が生成され、添加したリグニンやタンニンなどのフェノール性物質との間に橋かけが生成したものと考えられる。官能基の一つとして測定したパーオキシド基が増加することが認められた。酸化剤併用放電処理は次年度の興味ある研究課題である。
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