1986 Fiscal Year Annual Research Report
酵素・基質複合体の形成過程の立体構造エネルギー関数法による理論的研究
Project/Area Number |
60470163
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
郷 信広 九大, 理学部, 助教授 (50011549)
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Keywords | 蛋白質 / 立体構造エネルギー関数法 / 計算機シミュレーション / 複合体形成過程 / ジヒドロ葉酸還元酵素 / グラフィックス |
Research Abstract |
高速計算機による立体構造エネルギー関数法は、生体高分子の動的立体構造を、きわめて良い時間・空間分解能で「見る」ことのできる理論的研究手段である。本研究では、酵素蛋白質とその基質分子との複合体形成過程をこの方法により計算し、その結果をいろいろな角度から解析した。この計算は、基本的には、報告者の研究室ですでに開発済みの蛋白質の立体構造エネルギー関数の一次・二次微分を迅速に計算する方法、およびそれを用いた強力な関数極小化法およびモンテ・カルロ・シミュレーション法を用いて行なわれた。酵素・基質複合体を計算するためには、これら2つの分子の間の空間的位置関係を表わす6つの自由度を、上記の計算方法の枠組みの中に取り入れる必要があった。われわれは本研究においてまず第一にこの問題を解決した。次に、スーパー・コンピュータを用いた高速計算ができるように、一次・二次微分行列を計算する方法を改良し、所期の目的を達成した。これらの準備を整えた上で、ジヒドロ葉酸還元酵素と、その基質あるいは阻害剤との複合体形成過程の計算を行なった。この酵素は、核酸前駆体の合成経路中の重要な位置を占めるもので、ガン細胞においてその活性が著しく増大するところから、この酵素の阻害剤は制ガン剤としての働きを持つものと考えられているものである。計算結果をグラフィックスを駆使することにより解析した結果、この酵素蛋白質は基質あるいは阻害剤との複合体形成過程において著しい誘導適合現象を示すことが明らかになった。一方この分子の立体構造の動的側面を研究するために、規準振動解析を行なった。誘導適合現象で見られる立体構造の変化は、非常に低い振動数を持つ規準振動の変化によって引き起こされることが明らかになった。本研究の遂行のために開発された方法は、広く酵素基質複合体形成過程の研究に応用し得るものである。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Nobuhiro Go: Macromolecules. 19. 2054-2058 (1986)
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[Publications] Y.Kobayashi;T.Ohkubo;Y.Kyogoku;Y.Nishiuchi;S.Sakakibara;W.Braun;N.Go: Peptide Chemistry. 1985. 259-264 (1986)
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[Publications] T.Ohkubo;Y.Kobayashi;Y.Shimonishi;Y.Kyogoku;W.Braun;N.Go: Biopolymers. 25. 123S-134S (1986)
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[Publications] Hiroshi Wako;Nobuhiro Go: J.Comp.Chem.(1986)
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[Publications] H.Mizuno;S.Lee;H.Nakamura;Y.Kodera;T.Kato;N.Go;N.Izumiya: Biophysical Chemistry. 25. 73-90 (1986)
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[Publications] 郷信広: パリティー. 1. 22-30 (1986)
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[Publications] 郷信広,他: "生物物理学の展開" 創造, 172 (1986)
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[Publications] Nobuhiro Go,他: "COMPUTER ANALYSYS FOR LIFE SCIENCE" OHMSHA,LTD, 315 (1986)